小説

□『甘くなきゃヤダ』
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「甘くなきゃヤダ」
休日、俺と宵風はケーキ作りに励もうとしていた
だからまだ何をつくるかは決めていない
「何がいいかなー」
「甘くなきゃヤダ」
「……。」
「……。」
「俺が食べれなくなっちゃうじゃん」
「イヤだ」
わがままなやつ…とか思いつつ「しょうがないなー」と言っている自分がおかしい
ちょっと味覚オンチな宵風はレモンキャンディーを食べていても「普通」というのでからかっていじめたくなった
「とりあえずショートケーキね」
「わかった」
意外と手先が器用な俺達
まぁ俺の目的はこれだけじゃないんだけどね
「ねぇ宵風?」
「うん?」
「ちょっと休もうよ」
「わかった」
そういって俺の計画が実行に移った
今日という今日こそは…!という思いで俺の心はいっぱいだ
「はい、レモネード」
「ありがとう」
そう、これこそが思惑どおり
いくら味覚オンチでも“すっぱい”と泣きたくなるぐらいにレモンを入れてやった
(ホントに飲めるのかな…)
ちょっと罪悪感が込み上げてきた…が無理矢理心の奥に押し込めた
ちなみに俺は指でなめただけで気絶しそうになったほどだ
「壬晴、目涙ぐんでる」
「え!?あ、いや…あはは」
やば、気付かれたかも!?
「…うん、おいしい」
ご機嫌そうにそれを飲む宵風
あぁカワイイ…
何だか可愛いくて胸が締め付けられる…
てか!何ともないの!?
「…ウソだ…」
「…?何か言った壬晴?」
「あーいや…」
どーゆー神経してんだろ
演技?…まさかね
…よし
「…おかわりする?」
「ん…。壬晴も飲む?」
あぁぁ、そんなトロンとした顔で見つめられると心がいたむ…!
「飲むよ…?」
「じゃあ僕も」
「そう」といってコップを取ろうとして屈んだ俺、伸ばした腕を掴まれた
「よい、て?」
ちゅ、と軽く唇にキスされた
俺は涙が止まらなくなった
(…わざと?)
いやいや、ありえないね
俺じゃあるまいし
「壬晴?大丈夫?」
「うんっ、平っ気っ」
舌が完ペキにマヒ
「キスされたの嬉しかったの?」
「…え」
キョトン、とした彼に呆然とする
初めてじゃないけどキスはレモン味
「じゃ、もう1回?」
「おかわり入れてこよーっと」
密かに逃げた
限界
つぶらな瞳しすぎ
つーか、俺の前以外では絶対禁止なんだから
理性狂っちゃうよ…
「はい」
「うん」
コップのうち3分の2レモン残りお湯
3分の1増えたよ宵風
ある意味生レモン以上
「…っ!?」
「宵風!?」
「どうしたの!?」という心配した顔をつくったつもりだったんだけど嬉しそうな顔してたみたい
「壬晴、顔笑ってる」
「そんなわけないよ!」
「口元ゆるんでる」
「…あ、ははは」
宵風が上目づかいでみてるよ
怒ってるっぽい
やば
「…いつから気付いてたの?」
気を取り直して質問
「最初から」
「ホントに?」
「嘘はつかない」
ハメたはずの俺がまんまとヤラれたってワケね
「だから…キスした?」
「それもある」
「…すっぱかった?」
「…聞くな」
その恐怖のレモネードを思い出したせいか宵風の瞳が潤んでいた
「…ゴメンね?」
「許さない」
「ゴメン!」
「…なんでしたのこんなこと」
「…カワイイ宵風が見たかったから…だよ」
そんなコトいったらなおさら怒ると思ってたけどこれ以上信頼を失うわけにはいかないので嘘はつかないで正直に話した
「やっぱり許さない」
うん、俺もやっぱり
怒るってわかってた
でもそっぽ向いた宵風の頬が赤らいでいたのはちょっと予想外だった
「宵風、照れてる…カワイイ…」
思わずにっこりしてしまった
このまま流されてくれないかなーとも思った
「でも許さないよ」
無理だったね
グイッと力任せに押し倒されて身動きがとれなくなってしまった
「よい、て?」
「次は壬晴の番」
「へ?」と首をかしげて宵風の動きを見ていれば、手元においた大量の生クリームをどうにかしようとしていた
「まさかっ!?待って!?その量はー!!」
と思っていたことに反して宵風は泡立て器についたクリームを俺の口の中に入れようとしていた
「んー!?」
勢いよく振るからあちこちにクリームが飛び散った
もちろん口元だけじゃなくて顔全体、服にも
でも幸いなことに口の中にはあまりクリームが入らなかったので味がわからなかった
「ふぅ…」
「いくよ」
「なにが?」
「スプーンで」
「ままままま待ってよ!?」
グイっ
大量のクリームが口の中に無理矢理運ばれた
その瞬間俺はくらっと目まいがした
そう、気持ち悪くなるような甘さー
「な…んで俺が、味…つけ、した、の…に」
「足しといた」
ケロっとした顔でサラッと言った
「何…杯…?」
「いっぱい」
俺は3杯でやめたはず…
「…4杯ぐらいかな」
「…」
「壬晴、おいしい?」
「うん、すごく」
甘えるような口調でいう宵風に対してものすごい嫌味で言ったつもりだったのに
「嬉しい…」
無邪気な笑顔の宵風がいた
何かもうどうでもいっか…
「これで許してくれるの?」
「ダメ」
押し倒されたままの俺に顔を近付けてきた宵風
あ、キス?…バレバレだよ
ふいっと避けた
怒っちゃったかな?
ぺろ
「ん…くすぐったい…」
「壬晴、甘い…」
ぺろ、ぺろ
宵風はさっき飛び散って俺の顔についたクリームをなめていた
「宵…て、やだ…やめ、て…?」
「…おしおき」
舌先でなめられるこっちの身にもなってよ
くすぐったくってつい笑っちゃうんだから
「よ、いて、もう、クリームないよ?」
「壬晴が甘いからいい」
今度は唇に軽くキスした
「もう許してくれる?」「うん、いいよ」
「…もうあんなこと、しないから」
少しいじめすぎたことに反省
「僕はするけど?」
「え?」
…んん!?
「ヤダっ!絶対ダメっ!!」
「じゃあ」
「…じゃあ?」
「もっと甘くして?」
カワイく首をかしげながら聞く君
その響きが充分俺には甘い
「いいよ」
二人は理解しあった
「壬晴、すっぱいのキライ?」
「うん、ダメ」
「壬晴もカワイイ」
宵風の方だよ、それは…
「甘いの作り直そっか」
もうクリームすごいことになってるしね
「いい」
「…なんで?」
「だって目の前に甘くてカワイイ壬晴がいるから…」






おしまい☆です
甘く書いたんですけど駄文でごめんなさい!!
良かったら一言下さい♪

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