◆キリ番の作品

□DQキリリク
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揺らいで行く明日


 互いの不安を打ち消すように、肌を重ねた。
 片腕だけの不自由な身体での行為は、以前のようにはいかない。
 こんなことまで儘ならないのかと、男は自嘲の笑みを口の端に浮かべた。
 愛しているのに、だからこうしているのに、それすら誤魔化す為にそうしているようでならない。
 男は不自由な体に負い目を持っていたし、女はその原因が自分にあると責めていた。女の自責を男は理解していたし、それ故に二人は愛情ではない何かで相手を縛っているようで恐かった。もう以前のようにはいられない。無邪気に愛だけ語って、無心に相手の、己の想いを信じられない。

「リリア」

 指を噛んで声を殺す女に、声が聞きたいとせがむ。せめて今だけは信じたい。体でだけでも感じていたい。感じてほしい。男が女を愛していること。女が男を愛していることを。


20111224
八叉之大蛇戦後のセイとリリア。二人の心情の変化を本編では書ききれていない気がして追記してみました。
タイトルは「恋をしたくなるお題」からいただきました。
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