◆キリ番の作品

□DQキリリク
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背中ごしに愛を囁く


 戦士の指輪だと、傷付いた兵士は言った。
 アレフガルド一(いち)の戦士、オルテガが形見に残した、魔法の指輪だと。
 そして、傷つき戦うこともできず、戦場から逃げ出した自分には、これを持つ資格がないのだとも。
 アレクシアには、その兵士を見て、思い出す戦士がいる。思い出すと、まだ心が痛む。もらった指輪は、父の形見というよりは、親友を偲ぶ形見だったのかもしれない。

 決戦前夜、アレクシアは長くポケットにしまいこんでいたその指輪を、レイモンドに向けて放って寄越した。
 過たず空中で受け取ったレイモンドは、手の中のものを認めるや眉を寄せた。

「わたしには大きいから。なくしたら大変だ。持っててくれ」

 不器用に笑う。こんな表情をするときは、決まって録でもない覚悟を決めているときだ。

(馬鹿が)

 思わず舌打ちしたレイモンドは、考えるより早く腕を伸ばしていた。さすがの反射神経で、逃れようとしたアレクシアの背中を捕まえる。素早さでは、レイモンドに一日の長があった。

「レイ…っ」

「なくさず持ってろ。王都に帰ったら、お前の指にあうやつ、買ってやる」

 背中越しでもアレクシアが真っ赤になって息を飲んだのがわかった。

「う、うん」

 戸惑いながら頷く恋人のこめかみに小さく口付けて、レイモンドは思わず口走った内容に、内心飽きれ、少なからず後悔したあとで、彼女の幸せそうな微笑みに、まぁいいかと密かに息を吐いたのだった。



頂いたイラストに、暖めていたストーリーをちょこっと修正して書き上げたもの。
作者よりイラストの非表示依頼がありましたので、頂き物ページからイラストを撤去し、お話のみこちらに移転します。
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