ドラクエ2

□DQ2 if
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02.あるはずのない温もり

国を失ったかわいそうな王女は、夫に捨てられた憐れな女になった。

国王が国を捨てた前代未聞の大問題に、ローレシア政府は王を経歴抹消刑にすることで国の対面を保とうとした。
歴史から消された男を夫に持つ女もまた、歴史から消されたも同然だ。
王妃の母国であるからという理由で行われていた、ムーンブルク復興支援は打ち切られた。当然ムーンペタ臨時政府は遺憾の意を表明してきたが、ローレシアはこれを一蹴する。
アゼル失踪後、復位していたフェルーノ王は先の大戦で受けた傷がもとで臥せっていたが、一人息子の失踪後間もなく亡くなった。
実の娘のように庇い続けてくれた舅が亡くなると、サーシャは完全にローレシアでは孤立した存在となる。
かつての若王夫妻の寝室は、「忘れられた王妃」サーシャを軟禁する牢獄となった。幸福な未来を誓い合った寝台に、愛する男のぬくもりはない。
今では寂しいだけのこの部屋から、サーシャが忽然と姿を消したのは、フェルーノ王の喪が明けた日の朝だった。
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