ドラクエ2
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01.傷跡を自覚した朝
歓呼の声で迎えられ、凱旋した。
英雄として即位し、勇者として治めていく事が出来ると思っていた。
理想があった。その理想に向かって、順調に事は進むのだと思っていた。
理想は、あくまで夢だ。
先の大戦で著しく疲弊した王家に対し、諸侯は協力的ではなかった。若い国王を、明らかに軽んじていた。
確かにアゼルは、政治に関しては素人である。それでも素直な彼の政策は、国の為、国民の為、妥当なものだったといえる。
しかしそれを実現させる術を、彼は持たなかった。
その力が、王家にはなかったのだ。
自分なりに精一杯奔走し続けた結果が、思ったように進まないもどかしさに。不満を漏らし、彼を支持しなくなった民衆に。アゼルは苛立ちと焦燥を募らせていった。
そしてあの朝、唯一の心の支えである最愛の妻が、失えざるサーシャが、自分のために命を狙われていると知り、アゼルは、国を捨てた。
命を賭して救った世界に、絶望して。