ドラクエ2

□DQ2 if
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0.三角形の始まり

「助けてくれたことには感謝しているわ。けれど、わたしのことは放っておいて!」
「出来ませんよ!」
「これはわたしの、ムーンブルクの問題だわ。ローレシアにも、サマルトリアにも関係ない!」

 サマルトリア王の名代として、ムーンブルクの視察の命を受けていたパウロはそこで言葉に詰まってしまった。
 だから、きっ、と二人の王子を睨みつけるサーシャの視線を真正面から受け止めたのはアゼルだけだった。

「なら、僕は僕の意思で、君の目的を手伝おう。ハーゴン打倒は僕個人の望みでもある」
「だめよ!」

 サーシャは即座に否定した。パウロも驚いてアゼルを見詰めている。

「なぜ?」

 無邪気ともいえる仕草で、アゼルはサーシャをまっすぐに見詰め返す。

「姫君のお供は、騎士や勇者だと相場が決まっているじゃないか。僕らじゃ不服かい?」
「そうじゃなくて」

 首を振るサーシャには、最初の勢いがない。

「あなたたちには、帰る場所がある…。守るものがあるわ」

 ぎゅっと握り締めた拳を、アゼルが包み込むように握る。

「君を、守りたいんだ」

 サーシャの顔は真っ赤に染まったが、アゼルはお構い無しにパウロにも頷きかけた。
 一瞬面食らったが、促されてパウロもサーシャの手をとる。

「一緒に行きましょう。サーシャ」

 左右に立つ王子の顔を交互に見比べて、サーシャはやがてこくりと頷いた。

 邪気のない笑顔で、本当に嬉しそうに、アゼルが笑った。
 空いていた手を、パウロに伸ばす。
 それをパウロが掴んで、三人は繋がる。

「僕らの三国同盟だ」

 いびつな三角形に、満足げにアゼルが笑う。

「ローレシア・ムーンブルク・サマルトリアの三国同盟も生きていますよ」

 パウロがあわてて政治的なフォローを入れた。

「サーシャ、忘れないで。君は一人じゃない」

 しっかりと二人の手を掴んで、アゼルは言った。そこに迷いはなく、彼の瞳はどこまでも澄んでいる。
 その手を握り返し、サーシャは再び強く頷いた。
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