◆ときめきトゥナイト
□ときめきお題
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夜の自警団さんへ 復活お祝いSS
11. 跳ね上がった心で気付いた -1
初めてだったんだ。
ぼくの事を「ぼく」として見てくれた女の子は。
城にはいろいろな種族の魔界人が出入りする。種族特有の容姿をした者達を差別するわけではないけど、やっぱり伴侶となるなら自分と同じタイプの女性がいい。
城の外れにひっそりと建つ塔に飾られた肖像画の女の人のような。優しく微笑む女性(ひと)が。
そのひとは、いつも優しく微笑んでいた。
勉強がいやで逃げ出したとき。怒られたとき。どんなときもぼくを迎えてくれた。
寂しくて寂しくて張り裂けそうだったぼくの心を癒してくれた。
あの笑みがあったから、ぼくはやってこれた。
寂しかったけど、我慢できたんだ。
いつの頃だっただろう。その肖像画(ひと)が、ぼくの母上と知ったのは。
塔からこっそり持ち出した肖像画が、ぼくを生んですぐ亡くなられた母上だと、サンドが教えてくれた。
母上だからだ。だからこんなに心が安らぐんだ。
大人になって、いつかお嫁さんをもらうなら、母上みたいな女性がいい。ぼくをぼくとして見てくれて、他の子供と同じようにぼくを本気で叱ってくれる人。
そんな女の子、いるわけがないんだ。
だってぼくは王子だから。
みんなぼくの顔色を伺う。ぼくのチイやザイサンが目当てで近づくんだ。
仲良しだった子も、友達だと思ってた子も、みんなみーんな嘘だ。
ぼくが転んだら、青い顔して転んだ責任をなすりつけ会う。誰も「大丈夫?」「なにやってるのさ、ドジだな」なんて言うやつはいない。
次の日から、そいつらは姿を見せなくなった。
なにも考えなければ、なにも感じなければ、嫌な思いをしなくてすむのかな。
始めから存在しないものを欲しがるのは、いけないことなのかな。
だけど欲しいよ。
母上。
ねえ、母上。ぼくもいつか、母上のような人と出会えますか?
問いかけても、母上は応えてくれない。
だって肖像画だから。
やっぱりぼくは、欲しがっちゃいけないのかもしれない。
でも――
やっと見付けた!
ぼくを王子だと知らない魔界人の女の子。ぼくをぼくとして見てくれるひと!
ぼくらの出会いは運命だったんだ。だってそうとしか思えない。
母上みたいな黒い髪。母上みたいに優しい君。
身分なんかどうでもいい。王子のぼくが決めたんだ。誰にも反対なんかさせない!
手段は問わない。
君の気持ちなんて関係ない。
王子(ぼく)が望んだんだ。ぼくが決めたんだ!
君は、ぼくのものだ。
誰にも渡さない。
君が、誰を好きでも。
アロンが惚れ薬をつまんでるシーンを連想してもらえるといいなー、なんて思いながらまずここまで!