◆ときめきトゥナイト
□ときめきお題
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10．今日は離れてやらない！
こんどの日ようびは、ドウブツエンにつれてってくれるっていったくせに。朝おきたらパパはお出かけしたあとだったんだ。
ママにきいたら、パパがおせわになってるなんとかっておじちゃんに会いにいったんだって。
ボクのほうが先にヤクソクしてたのに！ パパはそのおじちゃんとあそぶほうがいいんだ。パパなんか大きらい！
「たーくー ママとお買い物行こうか？」
「…ハピハピセット食べていい？」
ほんとはどこにもお出かけしたくなかったけど、パパのいないときはボクがママを守るって約束だから…。
べっ、べつにパパとの約束だからじゃないよ！ ボクは男の子で、ママは女の子で、男の子は女の子を守ってあげなくちゃいけないんだ！ それに、ママのおなかにはいま赤ちゃんがいるから、おもたいものとか、もたない方がいいってパパ言ってたもん！
あ、だから、う〜〜〜
ばたばたしてたら、ママがにっこりした。ママがわらうと、ボクもうれしい。
「マコドナルドかぁ。久し振りだもんね」
それからボクは、ママと手をつないでお買い物に行った。マコドナルドでもおりこうにしてたし、お買い物もはんぶんこでおてつだいしたよ。
ゲンカンのカギもボクがあけてあげたし、手あらい、やうがいもじょおずにできたよ。おやつのホットケーキ、ママのはぼくがやいたんだ。ママはありがとうって、すごくよろこんでくれた。
ママがゆうごはんのしたくをしてるとき、でんわがきた。
「ママ！ パパから電話！」
「あら、ありがとう」
おだいどころから出て来たママに、ダメデショ、とおでこを突つかれた。まだなってもいないでんわが来る事をどうしてわかるかって、よその人に知られたらいけないんだ。
ＰiＰi…
「もしもし？」
『早いな…』
「卓が教えてくれたのよ。それで、小関さん大丈夫だった？」
『ああ、ただ…』
「どうしたの？」
ママの手をきゅっとつかむ。ふあんそうな顔をしていたママが、少しおどろいて、それからわらった。
『いや、帰ったら話すよ。９時頃には帰るから』
「うん、わかった。気をつけてね」
『ああ。蘭世、からだは…』
「大丈夫よ。素敵なナイトが付いてるもの」
ぱちんとウィンク。
ボクとママはいっしょにわらった。
「卓、パパね。遅くなるって。今日はママとお風呂入ろうね」
「うん！」
おゆうはんも、おふろも、はみがきも、みーんなママと二人だけ。
大すきなママを一人じめ。赤ちゃんが生まれたら、ボクはお兄ちゃんだから。
パパとドウブツエンにいけなかったのはつまんなかったけど、ママを一人じめって、ちょっといいかも。
「ママ、一緒に寝ていい？」
「いいわよ。いらっしゃい」
ママのむねにぎゅうってしがみついて、ボクはねたんだ。
明日は、パパともあそんであげるからね。
赤ちゃんが生まれたら、うんとかわいがる。だから…
今日だけは、ママを一人じめしてもいい？
―――――――――――
2１時05分。帰宅した俊は、出迎えにも、リビングにもいない妻に首を傾げた。
（寝たのかな…）
二階の寝室にも愛する妻の姿はない。代わりに隣の子供部屋から二つの寝息。
「やれやれ」
眠っている癖に、蘭世の寝間着をしっかり掴んで話さない愛息に、俊は複雑な顔で笑った。
終
【あとがき】
パパＶＳ卓の構図になるはずでしたが、出来上がってみれば愛良が生まれる前の卓お兄ちゃんの葛藤。
上の子って甘えん坊だけど、お兄ちゃんとしての責任感も強くて、自分を押し殺しているんではないかと。
うちの子をみていて思い付いた一本。
卓の一人称ってことで、１年生が習う漢字だけ使おうと、仮名多めにしてみました。