Sonud Horizon

□Roman
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歓びと哀しみの葡萄酒


其れは 歓びに揺らぐ《焔》 哀しみに煌めく《宝石》
多くの人生…多くの食卓に…彼女の『葡萄酒』(vin[ヴァン])があった――
横暴0501[な]運命に挑み続けた女性「Loraine de Saint - Laurent」[ロレーヌ・ド・サンローラン]
大地と共に生きた彼女の半生…其の知られざる《物語》(Roman)


嗚呼…彼女は今日も畑に立つ 長いようで短い《焔》(ひかり)
得たモノも喪ったモノも 多くが通り過ぎた…
嗚呼…季節(saison[セゾン])が幾度廻っても 変わらぬ物が其処に在る
優しい祖父(grand-père[グランパ])の使用人(employé[アンプロワイエ]) 愛した彼との『葡萄畑』(climat[クリマ])

嗚呼…追想はときに ほの甘く
熟した果実を もぎ穫るよう0501[な]悦び(plaisir[プレイズィー])…

嗚呼…葡萄樹(vigne[ヴィーニュ])の繊細0501[な](délicat[デリカ])剪定は 低温で少湿が理想
造り手達(vigneron[ヴィニュロン])の気の早い春は 守護聖人の祭(Saint Vincent[サン・ヴァンサン])の後に始まる…
嗚呼…無理0501[な]收量(quantité[カンティテ])を望めば 自ずと品質(qualité[カルテ])が低下する
一粒(un grain[アン グラン])…一粒に(et un grain[エ アン グラン])充分0501[な]愛情(amour[アムール])を
それが親の役割……

嗚呼…追想はときに ほろ苦く
痛んだ果実を もぎ穫るよう0501[な]痛み(peine[ペイヌ])…

嗚呼…女は政治の道具じゃないわ…
愛する人と結ばれてこその人生(la vie[ラ ヴィ])
されど…それさえ侭成らぬのが貴族(noble[ノーブル])
そん0501[な]『世界』(もの)捨てよう……

(「残念だったネエ…」)

権威主義を纏った父親(pèr[ペール]) 浪費する為に嫁いで来た継母(mère[メール])
名門と謂えど…派手に傾けば没落するのは早く…
斜陽の影を振り払う…伯爵家(Les Comte[レ コーント])…最後の《切り札》(carte[カルテ])…娘の婚礼…
嗚呼…虚飾の婚礼とも知らず――
継母(おんな)の《宝石》が赤(rouge[ルージュ])の微笑(えみ)を浮かべた……

地平線 が語らざる詩(おと)…大切0501[な]モノを取り戻す為の…逃走と闘争の日々(ひび)…
その後の彼女の人生は…形振り構わぬものであった……

私はもう誰も生涯愛さ0501[な]いでしょう 恐らく愛する資格も0501[な]い…
それでも誰かの渇き(soif[ソワフ])を潤せる0501[な]ら この身0501[な]ど進んで捧げましょう…

樫(chene[シェンヌ])の樽の中で 眠ってる可愛い私の子供達(mon enfant[モ ナンファン])
ねぇ…どん0501[な]夢を見ているのかしら?

果実(pinot[ピノ])の甘み(desucre[ドゥスール])
果皮(tanin[タンニン])の渋み(astringence[アストラジャン])
愛した人が遺した大地の恵み(terroir[テロワール])
『歓び』(joie[ジョワ])と『哀しみ』(changrin[シャングラン])が織り成す調和(harmonie[アルモニ]) その味わいが私の『葡萄酒』(mon vin[モン ヴァン])

――そして…それこそが《人生》(et…C’est la vie[エ セ ラ ヴィ])

(其処にロマンは在るのかしら?)
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