Sonud Horizon

□Chronicle 2nd
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雷神の系譜


第四巻 27ページ…

世界を救いし隻腕(せきわん)の英雄亡き後
邪神が封印されし地に街を築き
自らが結界の役割を果たし
永き平和への礎(いしずえ)と成す...

誇り高き右腕に刻まれし雷の紋章(あかし)
彼(か)の者達の名は 雷神の民(たみ)
伝承の謎 紋章の秘密(ゆえん)
少年が描く軌跡 雷神の系譜

弱い者ほど徒党(ととう)を組み
身代わりの革(ひつじ)を捜す
愛を知らない幼き日々は
灼けた石の痛み

ひとり唇噤(つぐ)んだまま
膝を抱えて耐えていた
雨も宿ればいづれ過ぎ去る
嵐もまた然り

されど輝かざる紋章(しるし)
本当の強さってなんだろう?
差し出された少女の小さな手が
とても大きく見えた…

黙したまま何も語らぬ歴史の手の平の上で
出会ってしまった少年と少女の物語
十年の歳月も一閃の雷が如く
過ぎ去ってしまえば刹那
今...黒の歴史が再び動き出そうとしている…

遠い空見上げて この胸を焦がす
浮かぶのは彼女の 愛らしい笑顔だけ
適わぬ想いと 識っていながら…

麗(うるわ)しの君は何故 一族の長(おさ)の娘
部族一強き者の許(もと)へ
嫁ぐこと定めしは 変えられぬ民の掟

嗚呼...雷(ちから)無きこの腕じゃ 君のこと護れない?
想いなら誰にも負けないと
叫んでもその言葉 虚しくも風に消えた…

期(き)は満ちようとしていた 長の娘も今年で婚礼を定められし齢(よわい)十六
その誕生の日が差し迫り 一族の猛者(もさ)達は競って名乗りを上げた
期は満ちようとしていた 邪悪なる波動が街全体を包み込み
空に立ち込めたる暗雲は <三度目の嵐>の訪れを告げようとしていた…

「おぉ..(おばばさま?).何ということじゃ(どうなされました、おばばさま) 黒き法衣(ローブ)を纏いし者達の影が見える(おばばさま!)
予言書の使徒(子供泣く。大丈夫よ。静かに) 奴らを封印の深奥(しんおう)へ行かせてはならん(なんと恐ろしい)
邪神の封印を解こうとしておるのじゃ(おばばさま)(雷神様がお救いくださるわ)
いまや雷神様の血も薄れ 我らに扱えるは小さき雷(いかずち)のみ(おばばさま)
あぁ恐ろしいや 天地を揺るがす強大な力じゃ 来るぞ...あぁ来るぞ…」

地を割る咆哮(ほうこう) 天を裂く爪牙(そうが) 烈火の如く燃えさかる六対(ろくつい)の翼
暗黒を宿した瞳に魅入られただけで 勇猛なる戦士が次々と倒れていった…

嗚呼...人間は神の前では かくも無力なモノなのだろうか...
誰もが深い絶望に呑まれかけていたその瞬間(とき)
ひと際眩(まばゆ)い閃光が雷無き青年の体を貫いた…

「覚醒めよ...勇敢なる右腕を持つ者よ...
直系の雷(ちから)を受け継ぎし者よ...
かつて私は邪神を封印せし折 雷の槍を放ったが故右腕を失った
今その雷を解放すれば 右腕はおろか全身が吹き飛ぶやも知れぬ
御主にその覚悟があるか?
…ならば今こそ覚醒めよ<雷神の右腕>よ!」

「ひとりでは耐え切れぬ 雷(ちから)でもきっと
ふたりなら大丈夫 私は信じる!」

暗雲を貫く雷(いかずち) あの日であった少年と少女は
今...二つの紋章(しるし)重ね合わせて 輝ける未来(とき)を紡ぐ…

「…ちゃん...ねぇ...お婆ちゃん...お婆ちゃんったらぁ
 どうしたの?それからお話どうなったの?」
「おぉ...そうだったねぇ ごめんよ」
「その後 雷神様が邪神をやっつけたんだよね?ね?」
「さてどうだったかねぇ...
 昔の話だからもう忘れちゃったねぇ…ふふふ…」
「えぇ〜 そんなのずるいよぉ〜」
「本当はね、本当は…雷神様の力なんてどうでもよかったんだよ。
 その女の子は初めて会った時からずっと
 その男の子のことが好きだったから」

...そう言って微笑んだ祖母の瞳は とても優しい色をしていた
...その時の事は今でも印象深く覚えている
...私は信じているのだ 雷神の系譜は途絶えていないのだと…

受け継がれるモノ...受け継がれざるモノ...
暗雲を貫く光を翼に受け...その白鴉は羽ばたいて往く…
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