ドラクエ3
□お題SS
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■くちにすれば終わりそうで■
王都だなんて言っても、所詮田舎だし、歳の近い子供は皆、同じ学校に通っていたから、町中の子供はみんな知り合いだった。
「アレク、こいつディ」
幼なじみのがき大将が引っ張ってきたのは、いつも遠目に見ていた、憧れの少女だった。
紹介されるでもなく、彼女の事は知っている。
彼女は目立つ存在だった。勇者オルテガの子だということを差し引いても、その容姿、才能は郡を抜いていた。
輪の中心で輝くように笑う彼女に、憧れる者は沢山いた。
僕もその中のひとり。
「知ってる。教会のディクトールだろ。僕はアレク。よろしく」
僕を知ってる?
あのアレクが?
そのときの僕は、差し出された手を握ることも忘れて、ただ彼女の笑顔をみていたんだ。
初等教育が終わると、僕は魔法課程に進んだ。セイは経営学科に進みつつ、剣術道場にも通うようになり、年中集まることはなくなった。
けれども、何故か疎遠にはならなかった。
相変わらず僕らの中心にはアレクがいた。
アレクがいなければ、今の僕らはなかっただろう。
成人したら旅立つことを決められていたアレク。
誰よりもかわいらしい少女だったのに、男の子の装いをし、少年のように振る舞っていたアレク。
少しでも力になりたくて、彼女の隣に立つのに相応しい人間になりたくて、僕は僕なりに頑張って来たつもりだ。
君はいつも、背筋を延ばし、凛と前を見据えている。
俯く事も、立ち止まることも、自らに禁じた君の隣に、僕は立てるようになるだろうか。
僕はまだ、君の光を直視できない。
自分の気持ちに向き直ることが出来ない。
こんな臆病な僕が。
君の隣に立つようになれるだろうか?
君と、セイと、僕。
自分の気持ちに向き直った時、この心地よい関係が、壊れてしまいそうで、怖い。