ドラクエ3
□お題SS
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■誰も居ない空間に「おやすみ」(2008.2.26up)
(母から子へ)■
おはよう。
いってらっしゃい。
おかえりなさい。
おやすみ。
当たり前のように言っていた言葉を言わなくなって、どれくらいがたつのかしら?
鏡の中の女は、白髪も増えて、ずいぶんと年をとったけれど、記憶の中のあなたはいつまでも16歳の頃のまま。
男の子のように育ててしまった事、本当はとても後悔しているの。
あなたはとてもかわいくて、
オルテガの子として生まれなければ、
いいえ、お兄さんでも居れば…
いいえ。
何もあなたまで、お父さんの真似をして旅に出なくてもよかったのよ。
オルテガの子だからって、勇者だなんて責任、子供のあなたが背負う必要なんてなかった。
お父さんが亡くなった時、アリアハンを出ていればよかった。
そうしたら、あなたは普通の女の子として暮らしていけたでしょうに。
ごめんね、アレクシア。おかあさんが、弱かったの。
あなたの居ない寝台には、くまのぬいぐるみが代わりに寝ています。
この部屋で、女の子らしいものといえばこのくまちゃんくらい。
殺風景なくらい、何もない部屋。
旅立つ前に、随分と整理していたものね。
もう、あなたが帰ってこないんじゃないかって、母さん、寂しかったんだから。
だから、実はこっそりあのときのごみはとってあります。
あなたにとってごみでも、母さんには大切な思い出だから。
だから、ここが、あなたの帰る場所。
いつでも帰っていらっしゃい。
魔王なんて、倒さなくていいから。
世界なんて、救わなくていいから。
勇者になんて、ならなくていいから。