ドラクエ3
□明けぬ空を背負って(本編1)
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0.旅立ち前夜
「さ、出来た」
鋏を櫛に持ち替えて、今切り終えたばかりの髪を梳いてやる。
鏡越に見つめ合い、母子は微笑んだ。
微笑む以外にどんな顔をしていいのかわからない。
「かあさん」
「うん?」
心なしか寂しげに、けれど優しく微笑む母親に、子は何か言おうと口を開いて、何も言えずに口をつぐんだ。
明日、子は16歳の成人を迎える。
母子にとってその日は、特別な日でもあった。
一人子の誕生した日であり、13年前父オルテガの死を知らされた日であり
そして、子が旅立つ日であった。