ドラクエ3

□明けぬ空を背負って(本編4)
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60.オルテガ

エレマは明らかに驚いた顔をして、それから直ぐに訝しげにアレクシアを見た。

「失礼ですが、勇者様はおいくつですか?」
「18になります」
「そのくらいですよね…」

しげしげと観察されるアレクシアの方も、何事かとエレマを見返す。

「オルテガ様のお子様だというのは本当ですか?」
「……はい」

即答しなかったのは、アレクシア自身に思うところがあったからだが、それを今ここでエレマに言っても仕方ない。

「オルテガ様は随分早熟でいらしたのかしら…それにしても年齢が…」

思考が口に出る質であるのか、エレマはぽつりと呟いた。

「どういうことです? 父は、オルテガは、私が小さな頃に旅に出て、消息を絶ちました。わたしも母も、国中のすべての人が、父は死んだと諦めていたのです。父は生きているのですか?」

苛立ちに、アレクシアの目は険を帯び、声もつい大きくなって、周囲の酔っ払いが何事かとこちらを向いた。少し離れたテーブルで宗教談義をしていたディクトールが、流石に気づいてこちらの様子を伺っている。レイモンドがそのディクトールに目配せをして、ディクトールが三人の近くに椅子を寄せた。

「失礼、お嬢さん。わたしもオルテガ様を知る者です。一緒にお話を伺っても宜しいですか」

問いの体を成してはいても、否をきくつもりはない。エレマが躊躇っているうちに、ディクトールが椅子を、レイモンドが飲み物を、芝居がかった笑顔で勧めてくる。頬を染めて飲み物を受取り、緊張していたのだろう。一気に半分ほど飲み干した。それから

「二年程前です。全身大火傷のあの方が運び込まれたのは」と、話始めた。
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