ドラクエ3

□明けぬ空を背負って(本編3)
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今更気付きましたが、こいつらスーに行ってないf^_^; 必要ないと思っていたので…

43-6

 アレクシアという魔法戦士を欠いての海上での戦闘は絶望的だった。だからこそディクトールとレイモンドは、せめてアレクシアだけでも逃がそうと、マルロイにアレクシアを連れて行けとキメラの翼を持たせたのだから。
 それが、蓋を開けてみればどうだ。
 アレクシアは魔物の放ったバシルーラで行方不明。生死すら定かではない。
 瓦礫だらけの船室で、思い思い椅子になりそうなものに腰掛け、顛末を語る一同の顔色は暗い。

「よりにもよって…」

 深い溜め息と共に顔を覆ったのはディクトールだ。言外に、飛ばされたのがアレクシアでなければ誰でもよかったのにという意志が滲み出て、レイモンドが舌打ちする。
 この場にマルロイが居れば、責任を感じて舌でも噛みかねない。マルロイは相変わらず体調が優れず、一番被害の少なかった船室に寝かせている。
 レイモンドの立てた、そのわずかな音に、指の隙間からディクトールは剣呑な視線をくれた。
 もとより反りの合わない二人だ。緩衝材となっていたセイが居なくなって、アレクシアの為に協力するとは言ったものの、そのアレクシアが居ないのでは協力する意味もない。
 一触即発の空気に、リリアは頭を覆いたくなった。
 こんなとき、セイが居てくれたら。
 暢気に笑っていた巨体が思い出されて、胸がじんわり暖かく疼くような、引き裂かれるような、複雑な気分になる。ともあれ、今居ない人物についてどうこう言っても仕方ない。
 リリアは大きく息を吸い込むと、無理矢理笑顔を作った。

「大丈夫よ! 無事に決まってるじゃない! ちょっとディ! やめてくれない? 辛気臭い」

 ただでさえ壊れそうなテーブルを叩いてリリアが劇を飛ばす。アレクシアのことを抜きにしても、不安材料だらけだが、だからといって立ち止まっていて事態が好転する訳もない。

「先ずはセイと合流しましょ。アルだって同じことを考えるはずだわ」

 不毛に睨み合っていた男二人は、ばつが悪そうに視線を外し、レイモンドが燃えカスでざっと地図を描きはじめた。

「セイがここ。今俺たちが居るのがこの辺り」

 言いながらレイモンドが丸をつけたのは、北メリア大陸を取り囲むカターディン山脈の海側の麓だ。セイのいる補給港迄1日あれば着くであろう距離まで来ている。

「確かなのか?」

 ダーマ神殿で学び、この世の魔法・呪文には精通しているつもりのディクトールだが、相変わらずレイモンドの操る魔法だけは皆目検討がつかない。これまでも何度かその恩恵に預かってきたものの、そう聞かずにはいられなかった。
文句を言うかと思われたレイモンドは、肩をすくめただけで取り合わず、マルロイは動かせるのかと逆に問うた。

「わからない。一晩様子を見て、良くないようならきちんとした医師に診せるべきだろう」

「船はどうするの?」

 これもまた頭の痛い話だ。レイモンドは渋面になって腕を組んだ。
 マルロイの容体は気になるが、様子を見ている時間が惜しい。船はこの際後回しにするとしても、近いうちに対策を講じなければならない。
 そうレイモンドが考えを述べると、ディクトールとリリアも同意を示した。
 最善とは言えないが、誰か一人残ってマルロイの面倒を見、あとの二人は朝夕なく補給港へ急ぎアレクシアと合流を図ると同時にセイを通じて町の人々に救助を乞うしかないだろう。問題は、その人選だ。

「僕が残る」

 何をおいてもアレクシアを優先すると思われたディクトールの発言に、レイモンドもリリアも驚いた。

「そんなに驚くようなことかい? 道案内はレイモンドに頼るしかない。こんな場所にリリアを残すなんて論外だ。そしたら、僕が残るのが当然だろう? 君たちよりは医術に明るいつもりだしね」

 最後の一言が余計だが、全くその通りなので頷くしかない。

「そうと決まれば急いでくれ。目印でも付けながら行ってくれるとありがたいね」

「ああ。そうだな」

 リリアに目配せして立ち上がる。使えそうな物は一通りまとめてあるが、水と食料は絶望的に足りない。この場に残るマルロイとディクトールのことを思えば、少ない水と食料をレイモンド達が持っていくとはできなかった。

「強行軍になるぞ」

「ま、仕方ないわね」

 やれやれと息をはいて、リリアはローブについた埃を払って立ち上がった。
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