ドラクエ3

□明けぬ空を背負って(本編3)
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54.神話

人間と精霊と神の区別がまだ浅く、人が神の寵愛を一身に受けていた頃。
世界は平和で争いなどなく、魔物と呼ばれるものなど存在しなかった時代。

主神ミトラが命じ創られた世界にアースガルドと名付けられた世界があった。
神はアースガルドの上に緑豊かな大地を作り、人と獣を住まわせた。そしてその大地の中心に、やがて村が出来、町ができて、ネクロゴンドという人間の王国が出来上がった。
神々はネクロゴンドの人々に朝と夜、光と闇、炎と水の力を操る太陽と月の力を結晶化した石を授けた。
その石の力で人は常世の春を、天上の都そのものを地上に作り出した。人と妖精が交わり、神や精霊さえもが人と交わり、まさにネクロゴンドは第2の天上ともいうべき楽園になる。
人は過酷な労働からも、危険な狩りからも解放され、増えに増え、栄華を極めた。

登り詰めれば、あとは転がり落ちるだけ。

人間の長い歴史の中で、代替りするほどに人はその力を神から借り受けたものではなく、自分達の力だと勘違いするようになり、ついには神々への尊敬も、精霊達への感謝も持たなくなっていった。
ネクロゴンド王国の人々は己こそが地上の神だと、太陽と月の力を他を従える為に振るいはじめる。
アースガルドのそこここにいた神も、それに付き従う精霊も、次々と人を見放し、地上を離れた。
人と精霊の架け橋であった妖精は数的劣勢から隷属を余儀無くされ、多くは殺され、残ったものは都市を離れて森を閉ざして人との関わりを絶った。
人の安眠が惰眠となり、ただ醜い欲だけが地上に満ちるを見て、ミトラは地上をただ見捨てるのではなく作り直しを決めた。
醜く、汚れた人間を全て焼き払い、人間の建造物を崩して押し流す。
ミトラの下した裁きに、最後まで異を唱えていたのが大地の神ガイアとその妻ルビスだった。
人の中にもまだ心正しき者がいると、ネクロゴンドの人々によって枯らされてしまった地方の大地に祝福を与え、命の源である世界樹を植えた。他の神々とともに地上を去った精霊達の代わりにと、世界樹から新しい精霊を生み出した。
けれどそれさえも神の畏敬を忘れた人間によって奪われた時、ミトラはその雷を地上に放った。
ミトラの裁きの雷はギアガ高山を穿ち、その奈落からは異形が溢れた。山野の動物達が見る間に姿を変えて人に襲いかかり、人間ですら形を変えて隣人に襲い掛かった。
と同時に大地が激しく揺れ、ひとつであった大地は割れて、山からは炎が吹き上がった。裂けた大地に海水が流れ込み、大きな波と渦が地表を浚った。

未曾有の破壊の中で、ガイアはその身を大地と繋ぎ、心正しき民を守った。ルビスは眷属である霊鳥ラーミアを子供らに託し、ラーミアはその背に人々を乗せて破壊された世界から飛び去った。

竜の女王以外の神々がこの地上を離れ、わずかに生き残った人間が魔物に怯えながらも新天地を求めて旅をし、千切れ、隆起した結果限られた土地の中で時に衝突し争いながら自らの力で国を作り、文明を築いて来たのが今のアースガルドだ。
かつてのネクロゴンド王国に比べれば小さな国が乱立する。けれど地上は再び人間が支配する世界となった。海にすら出て、分裂した大地を行き来するようになった頃に、再びネクロゴンドの、否ギアガより破滅がやってくる。

魔物の王を賤称するバラモス
そしてまた、大魔王ゾーマが



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