ドラクエ3

□明けぬ空を背負って(本編3)
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50-3

「やった、のか…?」

 しばらくの間、四人はバラモスがまた動き出すのではないかと身構えていた。四人が見守る中、バラモスの体は黒く崩れていく。

「きゃあ!」

 黒い無数の羽虫が飛び立つように辺りに散るさまは、リリアでなくとも悲鳴を上げたくなる光景だった。

「気色悪っ!」

 思わず構えを解いて逃げ出したアレクシアの耳に、その声は聞こえた。

 ――お、のれ、アレクシア…わ、儂は諦め、ぬ、ぞ…。必ず…かな、らず…

「!?」

 ばっとバラモスの体に向き直り、隙なく身構えるアレクシアを、皆が何事かと振り返る。

「どうした?」
「いや、だって今…」
「何?」

 バラモスの体は、もうほとんど無くなってしまった。黒い羽虫達もどこへいったのか気付けば居なくなっている。
 アレクシアはしばらくバラモスの遺体を見詰めていたが、やがて何でもないと首を振った。

「いつまでもこんな辛気臭い所にいるもんじゃないな。行こう…」

 ――アレクシア

「え?」

 地上へと引き返そうと歩き始めたアレクシアは再び歩みを止めた。

「どうかした?」
「今、声が…」
「何も言ってないよ」

 女の声だった。先程の呪詛とは違う声だ。
 どこかで聞いたことがあるような、懐かしい声。どこで聞いただろう。記憶の糸を手繰り寄せようと目をつむると、ふわりと体が浮くような感覚に捕らわれた。

――アレクシア。よくぞバラモスを倒してくれました。この後は我らの仕事。今はお帰りなさい。あなたを待つ人のもとへ…

(この後って…?)

 声と一緒に途切れ途切れにイメージが流れ込んでくる。母の顔、懐かしいアリアハンの街並み、これまで通り過ぎてきた国や人々、そして見たことのない風景。険しい断崖の上、雲をつく岩山の上に聳え立つ白亜の城。天に一番近い場所。
 そこがなんなのか、声が誰なのか、考え付くより先に仲間達の驚愕の声がアレクシアの思考を中断させた。

「どうし…!?」

 口を開いたアレクシアも、驚愕に声を失ってしまう。どんな奇跡がおきたのか、アレクシアの目の前には、16歳になった朝後にした故郷の街並みがひろがっていた。
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