天空

□天空/短編
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膝を抱えている


ねぇ、どうすればいいの?
なにも見えないの。
ここは暗くて、なにもないわ。

恐くはないの。
あなたが私に光をくれた。わたしの内にはあなたがいる。
けれどあなたは?

あなたは泣いてばかり。
ないてなんかない、って、あなたはきっと言うでしょうね。
でも、私には見えているわ。
涙を流すことも出来ずに、中途半端に泣いているあなたの情けない顔が。

なにも見えないはずだ、ですって?

そうよ。見えない。
でもわかるの。あなたのことは。
何年一緒にいたと思ってるの?
あなたの事なんか、あなた以上にちゃああんとわかっているんですからね。

泣くなら泣く。
笑うなら笑う。
ご飯を食べるときはちゃんと食べなさい。
夜は夢を見るものよ。
夢を見たら、きっと会えるわ。会いに行くから、ちゃんと眠るの。
朝になって、目が覚めたら、少し泣いていいわ。
少しだけよ?
そしたら、もうぐずぐずしないで、顔をあげて起き上がりなさい。

涙を拭い顔を上げたなら、そこにあなたはかけがえのないものを見つけることになるでしょう。
気付くのが少し遅れたけれど、手遅れってこともないわ。
ふてくされた、あの笑顔を見せてくれたら、みんなあなたに笑いかける。
みんながあなたの笑顔を待っている。

そうしたら、そうね。
私のいるこの場所も、少しは明るくなるでしょう。
光が射せば、花も咲くわ。
花が咲いたら、虫も鳥もやってくるでしょう。
私はもう途方に暮れることもなく、停滞した悠久の刹那で、あなたを待つことができる。

待つ事には慣れているわ。
あなたが生まれるのを、私は何百年も待ったのだから。
ほんの数年よ。
知っているの。
だけど、あなたと過ごした、忙しく楽しかった時を知っているから、少しウズウズするかも知れない。
だから、急いでね。
私が待っているって、覚えていてね。
さもないと、迎えに来たとき、「遅い」って怒るかもしれないんだから。
ね?




20110411
ダイヤが乱れて、電波が届かない地下鉄内でふと書き始めたSS。
シンシア→勇者へ
アレフでとちった応援SS。
フリー配付といたします。
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