天空
□堕天使
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堕天使4
この冒険の中で、わたしは天使だったのだと、再認識した機会が何度かあった。
それは別に不快な出来事ではなく、安堵すら覚える出来事だったのだ。
けれどこれは違う。
動かない体。
重くのし掛かる圧力。
指一本、舌先ひとつ動かせない。
仲間を信じ、共に鍛えてきたわたしの体は、こんなことで容易く屈し、崩れてしまうものだったのか!?
ただ、上級天使である、あなたが目の前にいるという。それだけの事で!!
イザヤール!!
ようやく会えた。
あなたがわたしを追って下界に降りたと聞いたとき、わたしの心がどれ程の喜びにうち震えたのか知っていますか?
わたしがどんな思いで、あなたの背を追い掛けていたかご存知ですか!?
それなのに、なぜ!?
お師匠!!
死ぬ思いで集めた黄金の果実。あれがあれば、再び世界樹に活力を与え、天使界をもとの美しい故郷に変えることが出来るかもしれない。
動けないわたしの手から、果実は残らず奪われてしまう。
裏切ったのか?
そんな筈はない。
イザヤール。わたしは、信じている。信じたい。信じさせて。
胸の内は激しい感情の嵐が吹き荒れているのに、叫びになって喉を揺らすことはない。
あなたがいる。
あなたがいる。
あなたは目の前にいるのに。
あれほど焦がれ、求めた人が目の前にいるのに、触れ合う事は愚か、言葉を交わすことも出来ない。
友としてあなたの前に立つことが許されないのは、初めからわかっていた。
けれど
刃を交えることすら許されないというのか!
ただ、あなたが上級天使だという、ただそれだけのことで。
天使としてあなたに相対することが出来ないのなら、わたしは天使なんかじゃなくていい。
地べたを這う人間として、
わたしは天使に、神に、弓引く者になろう。