天空
□堕天使
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堕天使 3
人々の感謝や希望の心から生まれた黄金の果実。
けれどそこから生まれた物語はどれも悲しい結末を実らせた。
人の願が邪悪なものだということなのか。やはり人間は、救いの手を差し延べるにあたわない生き物なのだろうか。
否、彼等はただ、純粋に願ったに過ぎない。
父親は遺してきた娘の幸福を願い
神官は自らの無力さを呪い
老人は己が作品に叶わぬ夢を見て
死に行く己の身替わりに少女は人形に命を与え
孤独な女王はただひとりの友人と語ることを欲し
妻に先立たれた王は妻の面影を追い
死して尚子供達の行く末を案じた男は教壇に立つ事を望んだ。
個人的な欲望であれ、彼等はただ、強く願ったに過ぎない。
大切な誰かの笑顔を見るために。寂しさを埋めるために。
彼らニンゲンの弱さが、そうさせたのかもしれない。
しかし
「アイーダ!」
振り返ればそこには、命を賭してわたしと行動を共にしてくれる仲間達がいる。彼らもまた人間だ。
正義を信じ、神に祈り、みずからもまた正義を成そうと戦い行動する人は存在する。
わたしはなんだ?
こうして人を評価するわたしもまた、今はただの人間だ。彼等と何等変わることのない、力無いただの人間に過ぎない。
人の弱みに付け込み、願いを歪め不幸を呼んだのは、人ならざるものの力が及んだためではないのか。
身にあまる力を手に入れ、歪み滅んで行く人間を、神は嘲笑っているのだろうか。
人間の清い心を集め、世界樹に捧げて来たつもりだが、捧げたモノが汚れていたのか。はたまた世界樹そのものが汚れていたのだろうか。
天使の存在意義、天使の希望。世界樹。
少なくともわたしは、あの日世界樹から邪悪なもの等感じなかった。
世界を歩きまわり集めた、黄金の果実からも。
けれどそこに、得体の知れない何か強大で邪悪な意志が働いているのは確かなのだ。
ヒトでもなく、天使でもなく、ただわたし個人として、
わたしはこの意志に立ち向かい真実を暴く。
それがわたしに名を与えてくれた方へ唯一報いる方法だと信じるから。
「アイーダ! なにのんびりしてんの? さっさと歩きなさいよ!」
耳元では旅の連れ、小さな妖精が舌ったらずに囃し立てる。そして眼前には、仲間達が手を上げわたしを待っていた。
そしてその先に、淡く輝く世界樹。天空高く聳える、黄金樹の苗木が見えた。
2010.7.2
\をやったのはもうかなり前のはなしなので記憶が曖昧…