天空

□堕天使
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堕天 〜プロローグ〜

わたしが、どうして生まれたのか。
わたしが、どうやって作られたのか。
そんなことは、わたしには解らない。
記憶にあるのは、あの人の腕。
目覚めたわたしを、あの人が連れ出してくれて、名前をくれた。

アイーダ


あなたはわたしを、むかしのあなたに似ていると言って、優しく、切なく、未だ疼く古傷に触れるように、痛みを堪えるように微笑った。

あなたはいつも厳しく清廉で、いつでも正しかった。
あなたはわたしの目標であり、誇りだった。
あなたから教わり、鍛えられ、あなたからあなたの守護するウォルロの村を引き継いだ時、わたしがどれほど幸福だったかを、あなたはご存知ですか?
あなたの守り慈しんで来た人間に、敬われ感謝されることの喜び。
碧に輝く羽を持ち帰り、世界樹に捧げる誉れ。
全てあなたに微笑み、褒めて頂くからこそ、この身は心の底から喜びにうち震えるのです。

黄金の女神の果実を実らせた実績も栄誉も、ひいてはあなたのもの。
我が師、崇高なるイザヤール。
弟子たるわたしの業績は、全てあなたの成果なのです。

ますます輝きを増す世界樹が、黄金の果実実らせ、天空より黄金の神の車が舞い降りる―――

「あ…っ!?」

突然の衝撃に、わたしは、わたしたちは地に伏せた。立っていることすら出来なくて、天使の翼持つ身には本来有り得ぬ重力の鎖が、重くわたしたちの体を搦め捕り、不様に大地に体を縫い止めた。

わたしは必死にあなたの姿を探し求め、縫い止められた体を這いずって、ただあなたの温もりを求めた。

――イザヤール、さま!

絶望に歪んだあなたの顔。初めて見た、その表情。
不意に体は重力の枷を解き放たれて、どこからともなく吹き上げられた力の奔流に投げ出される。

あなたが、わたしに向けて手を差し延べた。
必死に差し延べた手は、ついにあなたの指に触れることは叶わなかったけれど

あなたの瞳が、唇が、狂おしくわたしの名前を呼んで、あなたの腕が、わたしの身体を求めたのを、わたしは確かに見たのだから。

あなたの瞳が浮かべた苦悶の色は、ウォルロの人間達が時折見せる、愛しい者との決別の時の表情に、よく、似ていた。


fin

2009.10.17

いま、果実7つ回収してイザヤールに奪われたとこです。
主人公が男であれ女であれ、堕天のオープニングイベントはイザ主を妄想せずにはいられないっしょ!

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