ドラクエ1
□竜の勇者と呼ばれた男
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英雄
長い航海の果てに辿り着いたのは、部族間の争いに疲弊した土地だった。
山からの清流に恵まれた肥沃な大地。前面に海、背後に山。その山は様々な鉱脈が眠り、人々の生活は豊かだった。しかしそれ故に、人々は鉱脈をめぐり戦い、血を長し、自らの行いに疲れはてていた。
「仕事が見付かりましたよ」
土地の調査に行くと、先見隊を引き連れて小舟で上陸していたアレフは、戻るなりにやりと計算高く笑った。
最近では箱にしまったままだった、ロトの鎧を身に纏い、高貴な騎士さながらに緋色のマントを海風に翻す。惚れ惚れと嘆息するローラも、航海中は着ることのなかった絹のドレスに着替えていた。
「ローラ。お前に国をやる」
帆船から上陸用の小舟に乗り換えるとき、アレフはローラを抱き抱え、大陸を見据えながらそう言った。驚き見上げるローラを見ることはなかった。優しく笑いかけることも。けれどそれ故に、アレフの言葉はローラの胸にずしりと響いた。
「はい。下さいませ。わたくしたちの国を」
海からやって来た異国の騎士と姫君は、戦火に疲弊した海洋の人々の心を引き付けた。
アレフは最初傭兵として小さな港町に雇われ、敵対する勢力から港と町を護った。
彼の強さは瞬く間に周辺の都市に知れ渡り、次々とアレフの元に庇護を求めた。
ただ神に祈り、気紛れに襲う破壊から逃れようともがいていた民衆は、わかりやすく現れた英雄に、全てを託したのだ。
神に祈るくらいなら、俺に祈れ。
傲慢な迄の強さ。しかしそれを頷かせるだけの強さを、魂の輝きを、アレフが持っていたのもまた事実だ。
後にアレフの近衛騎士団として組織される、アレフガルドからアレフとローラと行動を共にする船員達から、アレフとローラの素性が漏れ、アレフの人気は最高潮に達した。
そしてアレフは、長い部族間の抗争に終止符を打ち、ローレシア平原に統一国家を建国した。
20110330
神はなにもしない。人間がやるしかないんだ。
祈っても奇跡は起きないから、考えて、行動しよう。
応援SSを書きたかったんだけど、なんか違う…
所詮、アレフは英雄だから、選ばれた人間なんだもの。