◆ときめきトゥナイト

□お題外2
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新しい朝


膚の熱が、外気に溶けていく。
少し前までは体温よりも高いのではないかというくらい暑かったのに。

眠れないのか?

不意に耳元で囁かれた。
驚くとともに慌てる。自分が眠れずにモゾモゾと無自覚に動いていたから、彼の眠りを妨げてしまったのではないかと不安になって。

そんなことない。

相変わらず心配性だなと、吐息の中に笑みを含ませて彼がいった。二人で眠るには狭い寝具の中。初めて夜を共にしたときは真夏で、寝具からいくら体がはみ出そうと気にもならなかったけれど、こうして気温が下がってくると少し気になる。
はみ出ていた肩に、くいっと毛布が巻き付けられる。自然、反対側の彼の肩がはみ出ることになるわけで、風邪引いちゃうよと今しがた引っ張られた分だけ彼の方へと毛布を寄せ直そうとした手は、体ごと彼の腕に抱き締められた。密着した膚が、先程の熱を思い出す。

新しい布団買いに行かないとな。

え、やだ。

やだ、ったって、このままじゃそのうちほんとに風邪引くだろ。

う…っ、と言葉に詰まる。なんと言ったらそれらしい理由になるだろう。引っ越したら無駄になるから? 部屋が狭くて二組も布団を敷けない? どちらも理由としては弱い気がする。とても素直に同じ布団でくっついて眠りたいなんて言えない。

くすりと、すぐ横で笑みが漏れた。きっとバレバレだ。
抱く腕にぎゅっと、力がこもって

うん。おれも。

思いがけない言葉に胸が高鳴る。

お前の体、あったかいな…

二人で眠れば、風邪など引かないくらい暖かいかもしれない。
それでもやはり、いつまでもこのまま、というわけにはいかないだろうから

やっぱり次の休みは買い物に行こう。色々揃えたいって、言ってただろ。

そうね。カーテンとかラグは色を揃えたいな。真壁くんは、なにいろがいい?

なんでもいいよ。

もうっ、ちゃんと考えて! わたしたちのおうちだよ?

わたしたちの、のところで妙な間があった。幸せを噛み締めているのか。それでいて拗ねたように見上げてくる顔がどうしようもなく愛おしい。
本当に、何でもいいのだ。君さえいてくれるなら。
本音の代わりに抱き締めて、額にキスをする。立ち上る甘い香りが、淡い熱が、気だるい体を優しい眠りへと誘おうとしている。

見て、決める。急がなくても、ゆっくり気に入るやつを探せばいい。

腕の中で、どこか不満げだった蘭世も、今にも寝落ちてしまいそうな俊の言葉にそうねと頷いて目を閉じた。

目が覚めれば、いつもと同じ朝。
けれどそれは、二人で迎える新しい朝。
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