◆ときめきトゥナイト
□ときめきお題
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夜の自警団さんへ 復活お祝いSS
11. 跳ね上がった心で気付いた -2
君が好きだと言ったあの男。始めてみたときから気に入らなかったんだ。
あの男がいなければ、君はぼくを見るだろうか?
見るさ。そうに決まってる!
ぼくは魔界の王子様だ。きみは女王様になれるんだよ? こんなにすばらしいことが他にあるかい?
誰もが望んで、けれど手に入らないもの。
ぼくはそれを君にあげることが出来るんだ!
きみが望むなら全て叶えてあげよう。どんなものでも。この世界の全てと引き換えにしても構わない。
ねぇ、ぼくは本気だよ。
本当にきみの事が大好きなんだ。
少しでいい。ぼくを見てよ。
あの男がいなくなれば、きみはぼくのものになると思った。きみが命を張ってあの男を守るというならそれでいい。きみはあいつのためにぼくのものになればいい。
気持ちはあとからついてくるものだと、城の誰かが言っていた。
ぼくらには永遠の命があるんだ。きみは優しいから、ぼくを憎み続けるなんてできないよ。
ぼくは待つ。
きみがあいつを忘れて、身も心もぼくのものになるときを。
だから、今は偽物だって構わないんだ。
肩にかかる長い髪。触れたくて触れたくて、このぼくがどれだけ我慢していたか知ってる?
抱き寄せれば抵抗ひとつせず、ぼくの腕の中に収まる華奢な体。
腕にかかる重みがこんなに心地よいなんてしらなかった。
この重みは、熱は、きみの存在そのものなんだね。
きみが僕を信頼してるって証拠だろ?
「ねぇ蘭世。ぼくのことが好きかい?」
「…ええ、好きよ…」
口元に浮かぶ笑みを堪えることが出来ない。
見たか? 聞いたか? 真壁俊!
蘭世はぼくのものだ!
「ぼくも大好きだよ!」
ぎゅうっ! と抱きしめたら苦しそうに喘いだ。いけないいけない。女の子はセンサイなんだっけ?
「ごめんよ」
髪を書き上げて額にキスを落とす。
ちょっと肩を抱いただけで目くじら立ててたのが嘘みたいだ。
かわいい! かわいいぞ!!
なんだろう。この感じ。
体の中がふわふわする。走り回って叫び倒してもまだ足りないくらい興奮してる。
これが、シアワセってやつなのか?
「ね、蘭世ちゃん。ずっとこうしていてくれる?」
「…ええ、アロン」
力を加減して、今度は苦しくないように、それでもぎゅうっと抱きしめた。
あたたかい。
これが幸せ。
例えこれが作り出されたものでも、ぼくは十分幸せだった。