◆キリ番の作品
□ときめきのキリリク
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雷音
龍の咆哮のごとき轟音に、わたしはびくりと背を延ばした。
外は雨。
このままずるずると梅雨入りして、むしむしした日が続くんだろうな。
雷は嫌いじゃない。
むしろ、わくわくする。
台風とか、なんか好き。
でも、この季節、雷がなるといつも思い出す人がいる。
雷がだいっきらいで、雷が鳴ると必ず、髪を逆立て、布団やクッションやカーテンを被って隠れていたっけ。
くすり
ひぃ〜ん。かえでちゃ〜ん
泣きべその情けない顔。
いい子いい子してあげると、ひっしと縋り付いて来たっけなぁ。
綺麗じゃない。大丈夫よぉ?
笑いながら何度同じように諭したことだろう。
何度言っても、怖いものは怖いの! と耳と目を塞いでいたね。
ああ、今夜も凄い雨と雷。
わたしはもう、「大丈夫」って、抱きしめてあげられない。
でも、大丈夫よね?
あなたには、わたしなんかよりもっともーと頼りになる人がついてるんだもん。
ね?
2010.5.20 拍手おまけ
雷が鳴ったので。
ワタシ的にはこれ、病院の一室で寝ているかえでちゃんの語りのつもりで書いてます。
病室、監視装置に繋がれた老婦人。一際明るく稲光。重なるフラットラインのアラーム。
そんな感じ。
最近死にネタばかりですね(^^;