小説・悠久の車輪

□悠久の車輪ほのぼの小説第4段・五穀豊穣の歌い手と戦闘用メイド
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今日から特別イラストレーターの挿し絵があります!

それではほのぼの小説・第4段です!




神々に見捨てられた大地ツインガルド。
今回はその大陸南東部に位置する不死教団ネクロポリスの物語である。


ここはとある屋敷。
この屋敷には、メイドと執事、そしてそれに支えるご主人様のダルタニアがいる。
戦闘用メイドや執事達は戦い以外の時は普通のメイドや執事である。
だから今はそれぞれの業務に就いている。
その台所ではナスタチウムが皿洗いをしていた。
「ナスタチウムちゃん」
そこにスピードコンビのアニスが顔を出した。
スピードコンビとは、戦闘においてアニスとナスタチウムは速くて最強のコンビなのだ。
前線はナスタチウムが勤め、アニスは後方支援に勤めている。
戦闘の華麗さは、シャローン率いる最強メイド軍団な中でも一、二位を争っている。
性格上ミントやリゼみたいに明るくない二人の会話はとても静かである。
「どうしたの?」
「買い物の途中のミントが化け物メイドに食べられて…」
化け物メイドとは『目覚める少女 オリーヴ』である。
食べられたと言っても血を吸われただけだ、大量に……。



「悪いけどお買い物頼めないかな?」
「私が?」
「ローズマリーちゃんでも良かったんだけど、ダルタニア様の衣装作りに夢中で無視されて……」
「別にいいけど……」
「ありがとう!それじゃメモに書いてあるものをお願いね」
そう言ってアニスは台所から去っていった。



かくしてミントの変わりに買い物をする事になったナスタチウムは、ネクロポリスの領地から海洋帝国スケールギルドを横断してアルカディアに向かっていた。
メモを見た限りでは野菜ばかりだ。
ナスタチウムは農家の道を走ってた……と言うより飛んでいた。
「!!、!?」
途中ナスタチウムのスピードが止まる。
あの冷静なナスタチウムがとんでもなく動揺していた。
「ひ、人が……!?」
道の真ん中でうつ伏せに倒れている少女をみたら誰でも動揺するに違いない。
ナスタチウムは箒から降りて少女に駆け寄る。



「大丈夫ですか!?」
少女はずっしりと重かった。
この無駄に大きい胸のせいか、と顔より胸に目が行く。
突然ナスタチウムは、この緑色の服を纏った少女にどこか違和感を感じる。
普通の人の魔力ではない、と。
抱き抱えたまま一気に警戒体制に入る。
「ふぁ〜あ……、あ、おはようございます〜」
腕の中で少女は目を覚ます。
「貴女は?」
少女は一人で立ち上がると、ナスタチウムは距離を取った。
「私はナスタチウム……、道の真ん中で倒れていた貴女を見掛けて……」
「あや〜……、ごめんね〜この天気だから気持ちよくって……」
「それより貴女は……!!」
「あ、ごめんね〜、私はヤトラ。一応アルカディアの軍人をやってるの〜」
「やっぱり……」
ナスタチウムの予感が当たった瞬間、武器の箒を構える。
「はわわ!そんな怖い顔しないでよ〜、軍人とは言っても私争い嫌いだし……、それに五穀豊穣の祈り手として居るだけだし〜」
「……」
「あなたあれでしょ?ネクロポリスからお買い物に来たんでしょ?」
「なぜそれを……」
ナスタチウムはなぜわかるのか不思議で仕方なかった。
「ほら〜、ミントちゃんいつもここでもらって行くから〜、大体わかるよ〜」
「なるほど」
ヤトラに戦意が無いことを確認すると、箒を降ろした。
「で、野菜?」
「ニンジンと玉ねぎ、その他もろもろと……」
「は〜い、ちょっと待っててね〜」
ヤトラは脇の畑に降りると、両手を広げた。
その瞬間周りの大気が揺らいで見える。
これが五穀豊穣の祈り手……。
地面から野菜が飛び出てきて、みるみる内に野菜がでかくなっていく。
「え〜い!」の掛け声と共にニンジンが一気にでかくなった。
「これはでかい……」
目の前にはナスタチウムと同じサイズのニンジンが目の前に生えていた。



「助けてくれたお礼に、でかくしてあげたよ〜」
「あ、ありがとうございます……」
「いいのいいの」





一方ネクロポリスでは。
「う〜ん、ナスタチウムちゃん来ないなぁ……」
アニスが玄関でナスタチウムの帰りを待っていた。
「お、帰ってきた。おー……いぃぃ!?」
アニスは驚きのあまり、言葉が変になってしまった。
そりゃあ、手のひらサイズのニンジンや玉ねぎが人間と同じサイズなんだから。
「ただいま」
「な、ななナスタチウムちゃん……?それは……?」
「お礼にでかくしてもらった……」
「お、お礼……?」



この日の夕飯は野菜炒めがメインのヘルシーな夕飯になったとさ。


終わり

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