テニスの王子様

□四季による恋の処方箋を貴方に。
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4.冬恋(跡宍)





この街に、雪が舞い降りてきた。
今朝目覚めた時、普段よりも冷え込んでいるとは感じていたが、
遂に、今年も冬がやってきたらしい。



昨夜家に泊まり込んでいた宍戸は、窓から見えた雪景色に
「うわ、雪降ってるじゃねぇか!」なんてはしゃいでいるが、
俺はというと、去年の初雪は、宍戸と一緒に見たわけではなかったな…
などと、柄にもなく、少し考え込んでしまっていた。



宍戸と付き合い始めるまで。
俺はきっと、不器用な恋路を一人で歩いてきて。
遠回りだって、何度もしてきたはずだ。
だが、宍戸へと続いた道だったと気づけた今は、
その遠回りさえも、愛おしく感じられる。



宍戸の側に居て、その笑顔に触れることさえ出来れば、
俺の氷の様に凍えていた心も溶けていくし、
心の冬も終わりを迎える。
宍戸の温もりに出会えたことが、俺にとっての幸せだ。



『好きだよ』が言えなかったあの夏も。
『好きだよ』が言えた精一杯の秋の告白も。
今では、ひとつひとつに意味を持てるし、想いが色付いていて。
いつまでも宍戸を見つめ、愛し続け、
離れないよう、ぎゅっとしようと思える。



「なにしてんだよ景吾、お前も来いって!」



庭に出ている宍戸が、その姿を窓から眺めている俺に向かって、
両腕を大きく振ってきた。
俺を呼んだ唇からは、冬らしく、白い息が吐き出されている。



「あぁ、今行くぜ」



宍戸がいてくれて、愛してくれて、俺は幸せ者だ。
今年の冬だけじゃない。
これから何年、ずっと先も、共に生きてゆこう。



「ありがとう、これからもよろしくな」



窓から見える宍戸の背に向けて、小さく呟いてから、
俺はコートを手に、自室を後にした。





→あとがき。
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