テニスの王子様
□四季による恋の処方箋を貴方に。
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3.秋恋(千部)
『好きだよ』
メールに打ち込んでは、送れなくて消した言葉。
一日中考えて、やめて、それを繰り返して。
ほんと、俺って、馬鹿みたい。
ずっと跡部くんが好きで、好きで。
でもね、言葉にできなかったんだ。
Jr.選抜の時にはじめて出逢ったあの日から、ずっと。
何度も言いたくて、その度に、何度も飲み込んだ、
『好き』という、二文字の言葉が大きくて。
夏の大会が終わって、テニス部を引退してから、季節は巡り。
秋の風が吹いたのを感じたら、心がきゅっと痛くなったわけで。
秋って、ほんと、切ない季節だよね。
だからか、余計に寂しく感じちゃって。
この後やってくるだろう寒い冬には、
二人で温まりたいよ…なんて考えたりして。
この俺の気持ちの全てを跡部くんに打ち明けたら、
きっと、友達には戻れないと分かってるんだ。
たった一言が、たった一言がどうしたって言えなかった。
壊れる辛さ、失う悲しみを恐れて、何も始められなくて。
でも、それでもいいから、もう誤魔化したくはないんだ。
傷ついても叶わなくたって、ちゃんと跡部くんに伝えたい。
だって、この秋は、後悔したくないから。
「ラッキーは…自分で呼び込むものだよね」
跡部くんに、今『恋してる』と、届けたいんだ。
この俺の気持ち、貫きたいし、諦めたくないから。
「あ、もしもし跡部くん? あのね…」
ずっと伝えられなかった、俺の中にある二文字を伝えよう。
→4.冬恋(跡宍)