テニスの王子様

□四季による恋の処方箋を貴方に。
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1.春恋(鳳宍)





「じゃあな、長太郎」



青学に二度目の敗北を喫した、夏のあの日。
俺の想い人である宍戸さんは、テニス部を引退し、
日常的に使われる、ありきたりな言葉を残し、俺から離れて行った。



そして、季節は秋、冬と過ぎて行き…
遂に、春がやって来て、俺は、最上級生になった。
それでも、俺の想い人は、宍戸さんから変わっていない。



自分でも、いつまで彼を想い、引きずっているのか…
と思うし、泣いても、叫んでみても、
あの夏の頃の2人には、もう戻れはしないと分かっているけれど、
それでも、宍戸さんを超える人には、この先出会えないだろうと思うと、
彼を忘れられなくて、忘れたくなくて、会いたくて。
すでに、前を向いて歩き始めている彼と違い、
俺は、いつまでも、綺麗だったあの日から進み出せず、立ち止まったままだ。



でも、どれだけ切ない気持ちが心を募ったとしても。
寂しさが不意に押し寄せてきたとしても。
俺は、一歩を踏み出さなければならない。
彼が、俺の大好きな、宍戸さんがそうしたように。
綺麗だったあの頃の記憶を抱きしめて、今を生きて行かなければならない。



本当に、大好きだったんだ。
一生、忘れたくないと望むほど。
でも、もう動かなきゃね、笑顔を咲かせなきゃ。
だって、こんなにも、優しい春が来たんだから。



サヨナラ、宍戸さん。
俺、やっと前に進み出せるみたいだ。





→2.夏恋(ジャブン)
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