テニスの王子様

□心を閉ざした5題
4ページ/7ページ

3.ロスト・チャイルド(日吉)





俺は、常に一人で生きてきた。
いや、物理的な話をすれば、衣食住は親が面倒見てくれているし、
一人で生きてきたわけではないのだが、
それでも、俺はいつも【独り】だった。



自分で言うものではないが、俺は器用な方だ。
だから、大抵のことは、特に苦労することなく行うことが出来る。
しかし、逆に言えば、突出したものがない。
どれも平均的なのだ。



テニスなんてものは、そんな俺の姿をありありと表している。
正レギュラーに片足を突っ込んだ、準レギュラーのトップ。
それが、今の俺だ。
悪いわけではない、どちらかと言うと良い方なのだが、
だからといって、他の誰かのように突出した部分は無い故、
最後の最後で正レギュラーまで登りきることが出来ない。



そんな、良くもなく、悪くもない俺は、
周囲からは「放っておいても大丈夫な子」という認識下にあり。
凄く凄く構ってもらった、面倒を見てもらった…
なんて記憶は、欠片も無い。



あぁ、本当は、放っておかれると、不安でたまらないのに。
良くもなく、悪くもない俺は、自分に自信なんてもてるはずがないんだ。
でも、今更誰にも言えないじゃないか。
放っておいても大丈夫と思っていた子が、不安だなんて口にしたら、
周囲は驚くか、呆れるか…どちらかの反応をするに違いない。



こんな俺の気持ちを、状況を、
誰かが気付いてくれる時は、やってくるのだろうか。





(忘れられた子 / 仲間はずれ)





→4.クラウン(千石)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ