テニスの王子様

□心を閉ざした5題
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2.スケープゴート(赤也)





「いつもいつも、問題ばかり起こすな。」
親、先生、先輩…俺よりも上の立場の人達の口癖だ。



別に、ヤンキーのようにコンビニにたむろってるわけではないし、
不登校なわけでも、イジメの常習犯なわけでもない。
それでも、寝坊や学力低下、過激なテニスなど、
彼等が俺に対して目を吊り上げる理由は沢山あるらしい。



でも、俺は知ってるんだ。
俺を理由に、両親が普段はしない会話をする機会を得ていることを。
先生が、ムカつく生徒への怒りをぶつけることが出来ていることを。
俺に勝てない先輩が、俺を怒ることで優越感を感じていることを。



その理由を知っているから。
俺は、今の俺のスタイルを変えられない。
変えるわけにはいかない。
俺が今のスタイルを変えてしまったら、
両親は、何を理由に会話をするんだ?
先生は、一体誰に怒りをぶつけるんだ?
先輩は、何で劣等感を超える程の優越感を感じるんだ?



だから、俺が問題を起こすしかないんだ。
あぁ、本当は、俺はこんなにも傷ついているというのに。
この心の声は、誰にも告げることなんか出来ないんだ。





(問題児 / 生贄)





→3.ロスト・チャイルド(日吉)
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