テニスの王子様

□THE ULTIMATE HARD WORKERな跡宍
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6.KING'S GAMBIT





「てめぇはもう終わってんだよ」



一人で反対コートに立つ宍戸に向けて、跡部は言い放つ。
不動峰の橘に敗戦し、準レギュラーに降格した宍戸は、
来日も来日も独自の練習を繰り返していた。



無名校の選手に完敗したことを、周囲の部員達に馬鹿にされながら。



「なぁ、亮。さっさと覚悟を決めろよ」



二人きりの時にしか呼ばない、下の名を呼ぶ。
その声に、宍戸は顔を上げ、跡部の方を見た。



「追い掛けてんのは、見つめてんのは…もっと高くて、遥か遠くにあるもんだろ?」



言葉を紡ぎながら、跡部は宍戸へと歩を進めていく。
宍戸を見詰める跡部の瞳は、どこまでも優しいものだ。



「てめぇの自由を取り戻す為なら、犠牲をいくら重ねても構わねぇんだ」
「景吾…」



跡部の手が、宍戸の長く綺麗な黒髪に触れる。
跡部の為に、宍戸が伸ばし続けている髪だ。



「譲れない夢の為なら、惜しいことなんて、一つもないんだぜ?」



実力が伴おうと、一度敗戦した奴を正レギュラーとして使うなど、
氷帝の監督である榊がしないことくらい、二人も理解している。
それをはね除ける為には、それ相応の覚悟と、
その覚悟を証明する為の行動が必要だ。



「また試合のコートに立とうぜ、一緒にな」
「あぁ、当然だ」



この、綺麗な髪を失うことになろうとも。
それよりも、譲れない夢がある。



覚悟を決め、己の中で何かが吹っ切れた宍戸の顔には、
以前同様の、跡部が愛して止まない笑みが浮かんでいた。





→7.SHOOT DOWN
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