テニスの王子様

□THE ULTIMATE HARD WORKERな跡宍
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5.EXISTENCE





「引退して、卒業したら、離ればなれになんのかな、俺達」



部室にある大きなソファに体を沈めながら、
宍戸は誰に問うでもなく呟いた。



部活を引退して、中学を卒業すれば、
あとは各々の進路に進んでいくだけ。
入学した時は、まだまだ遠いと感じていた別れの時期が、
今はもうすぐ目の前まで近付いていることに、気持ちが落ちていく。



「跡部は、どうすんのかな…」



海外に行くのか、プロになるのか。
はたまた、全く別の道に進むのか。
跡部なら、その気になればなんでも出来る。
宍戸には、そんな気さえした。



それはつまり、自分とはかけ離れた道を進む可能性が高いというわけで。



「一緒に…居てぇなぁ…」



もう、身も心も跡部への愛で一杯なのだ。
そして、跡部からの愛がもっと欲しい。これからも、ずっと。



いつものように、欲しいものは全て手に入れるその手で、
自分のことを掴まえていて欲しい。



「跡部…」
「どうした、宍戸」
「へ…?あ、跡部?!」



声がした方に視線を向ければ、そこには跡部が居た。
一体いつから居たのだろうか。
ソファに顔ごと体を沈めていた宍戸には、分からなかった。



驚きの表情を浮かべる宍戸に、跡部は手を伸ばす。
そして、鮮やかな黒髪から、頬から、首、鎖骨…と、手を滑らせていく。



「変な心配してんなよ。この俺様が、やっと手に入れた宝物を、そう易々と手離すわけないだろ?」



そう囁く跡部の表情・声は、狂おしくて、麗しくて。
宍戸を安心させるには、十分だった。





→6.KING'S GAMBIT
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