テニスの王子様

□THE ULTIMATE HARD WORKERな跡宍
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1.BROKEN





「なぁ、景吾」



俺の部屋で本を読んでいた宍戸が、ふと顔を上げた。
その顔には、普段見ることはない眼鏡がかかっている。



宍戸は頭が悪いテニス馬鹿。
周囲にはそんな印象があるだろうが、
実際の宍戸は、俺なんか比べ物にならないほど、知識に貪欲だ。



俺の部屋にある、いわゆる小難しいと言われる本を読む時、
宍戸は今のように眼鏡をかける。



「景吾は、地球温暖化と、それに対しての大人の動きをどう思う?」



あぁ、今宍戸が読んでいるのは、環境に関するものか。



「そうだな…正直、もう手遅れだろ」
「だよな。しかも、この状況を作ったのが、人間ってあたり、どうしようもねぇよな」
「首を締めた人間と、首が締まった人間は別だけどな」
「あー確かに。当時は別に困ってないわけだしな」



俺と宍戸が環境問題について真剣に話し合っている。
こんな姿を一体誰が想像するだろうか。
向日あたりが見たら、驚きから騒ぎ出すに違いない。



「何が正解か過ちかなんて、同じ人間である以上、誰も裁けやしねぇよ。
 仮に裁けたところで、相手はもういねぇ」
「でも、このままじゃヤバイだろ?」
「そうだな。でもまぁ」



俺は立ち上がり、宍戸の隣に移動する。
そして、レンズ越しにその黒い瞳を見つめる。
顎に手をあてながら。



「未来のお前の中に俺が残せれば、俺は地球が滅ぼうが、今更どうでもいいぜ」



地球が汚れたのは、過去の大人の仕業。
今更どうでもいい。
だから、今この時は。



「俺だけ見とけよ。悪にはさせねぇぜ」
「ちげぇねぇ」



俺の声で、色で。
愛する宍戸に、偽りの無い愛を伝えよう。





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