テニスの王子様

□THE ULTIMATE HARD WORKERな跡宍
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12.Oblivion...





「三年間、ありがとな、景吾」



夕焼け空をバックに、宍戸は跡部にそう告げた。
二人の手には、卒業証書が入った筒が握られている。



そう、今日は氷帝学園中等部の卒業式。
当然のように女子に囲まれた二人だったが、
夕方にもなれば、人だかりも無くなり。
一通り挨拶を済ませ、二人でやってきた河川敷は、
卒業式後の学園とは真逆で、とても静かだ。



そこには、青学に敗れ、全国優勝の夢が破れた日に、
二人で見上げたような夕焼け空が広がっていて。
その、目にしみるほどの夕焼けを見ていると、
無意識にあの日を振り返ってしまい、
二人の胸は、少しチクリと痛んだ。



輝いていた季節は「永遠」に続くことは無く。
終わりが訪れてしまえば、呆気無いもので。
もう今では、アルバムの閉じた1ページのようなものだ。
そして、同じ夢を失くした面々は、アルバムを閉じ、
それぞれの道を歩き始める。



「景吾と駆け抜けた三年間はさ、もうかえらないけど。
 でも、俺は忘れないぜ、今までの日々を」
「俺も、亮と駆け抜けた日々、思い、失くさないぜ。
 亮と過ごした日々は、いつでも、俺の折れた心を癒してくれる」



お互いの目を真っすぐ見つめ合い、言葉を紡ぐ。
今まで、当たり前のように共に過ごしてきたが、
これからは、そうはいかない。
二人も、それぞれの道を歩き始めているのだから。



「俺と過ごした日々に甘えて、激ダサなことすんなよ?」
「当たり前だ。俺様が何かに甘えて、
 誇り高く生きることを忘れるわけがないだろ?」
「おう、そうだな…」



消え入る声で呟いた宍戸の顔が、微妙に歪んだことを、跡部は見逃さず。
その歪みが大きくなり、涙が零れ落ちてしまうのを隠すかのように、
跡部は宍戸の身体をゆっくりと抱きしめた。



「景吾、俺…」
「あぁ」
「中学生活、景吾と過ごせて、本当に良かったよ」



「日本に来てくれて、出逢ってくれて、ありがとう」
と、泣きながら、抱き着きながら呟く宍戸を、
更に力強く抱きしめて。



「俺も、日本に来て、亮に出逢えて良かった。
 亮に出逢えたこと、亮とともに三年間駆け抜けたこと、
 全部が、俺の最高の、永遠の宝物さ」



跡部も、宍戸への思いを告げた。
泣きボクロを伝い、一筋の涙が零れていることを、
愛しい宍戸には隠しながら。





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