記憶の回廊
□第二章・渦巻く月夜
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望むのは、檻の間から零れる月光。
その小さな望みすら、叶えられることはない。
暗闇の中、何度“君”を思い出してないたことか。
心の隙間から零れる、悲しみが。
「…も、…わり…に、」
辛くて、だけど助けたくて死んでいったのに。
再度生まれることを望まなければ、きっとこんな苦しみを味わうことは無かった。
昔から燻っていた心を殺せるならば、私はどんなことでもしよう。
共通、暴れまわる心を、彼女達は押し殺して振舞う。
「……さ、ま…」
深く愛したまま、幸せの過去を抱きながら、眠っていればよかった。
今生きていることが、一番の不幸だ。
並べてしまえば、後に自虐的な笑みと、味気のない毎日が残る。
瞼を開ければまた、苦しみが募る毎日に戻ってしまう。
「…ならば、このまま死んでしまえ」
視界に光が差し込んだ瞬間、自らの声が異常に冷たいことを知った。
それに驚くだけで、零れた言葉になんの興味もない。
これが本心だけれど、伝わることも届くことも、結局はないのだから。
「…死んでしまえ、」
身体をむくりと起せば、自らの部屋とは懸け離れたまぶしい世界。
よく入る部屋だけど、豪華すぎていつも溜息が出る。
大きな窓、月光と夜風が戯れていた。
「…お前は時々、凍るような声を出しますね」
「っ!?」