所詮選択肢の一つですから。

□所詮選択肢の一つですから。Y
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「め、めぐす」
「だめ、泣きな」






どんだけ男らしいんだよ。
ちっさい身体で可愛い顔で、まだ目には涙が溜まっている。
だけど顔つきは監督の顔だった。






「結婚式してるとき、」
「え、ラストじゃん」
「うん、アンタの涙で閉める」
「えぇ、そんな無茶な」







杏とは部長の役どころの名前、ダブル主役みたいなカンジ。
私の役は雪人、感情を表に出さず、杏のことを余り考えずに行動してフラれる役。
いや、考えてんだけど、表せない人、みたいな。








「今更遅いけど、好きなわけなのよ」
「雪人が?」
「そ、好きだって呟くより、インパクトあるでしょ?」
「……あるねぇ」
「ふふふv」







怖い…。








「というわけで、台詞あわせはおしまい!」
「え、」
「あんたは泣く練習、ここで」
「ここで!?」
「うん」







こんな公衆の面前、でもないな、だってみんな背中向けているし。
とりあえず写真部のほうをみて泣くものでもないよな。
山を横に長細く伸びている体育館、写真部はその木々の傍で写真を撮っている。
私は体育館と平行に身体をむけ、ぼうっと前をみた。
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