記憶の回廊

□第二章・渦巻く月夜
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「…黒為様…?」
「…あぁ、…いや」







ぐるぐると駆け巡る、いい表せない記憶。
この苦しみを、俺と兄は当の昔に捨ててしまった。
だけど白乃、“少女”はずっと戦っていた。
そして多分、…あの人も。






「月臣の牢に、いるのは誰ですか?」









沈黙が流れた、それを破ったのは黙って月を見ていた母だった。
振り向いて、じっとこちらを見詰める母の瞳は、切なくて。
呆然と自らを見詰める息子を、宥める様に言った。









「…いるのは、“神”ですか」

「…え、」








分るのは、兄と俺と、白乃とあの人。
強く、強すぎる絆とともに、やっと俺達はめぐり逢った。
だけど俺は、逃げていた。

命を削って生まれてきた彼女達を、…俺達は。






「“神”とは、…お義母様…?」

「…黒為、お応えを」







記憶が駆け巡る、最後の死に際の笑顔が。
駆け抜ける、遠くの空を見詰め、薄っすら涙を浮かべたあの人の横顔。
心臓を打ち抜かれるような衝撃と
ともに、俺は抱き締めた。


…誰、を ―?















































第二章・<渦巻く月夜> 終わり
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