「う・・・ん?」
どこだここ?
「うっ」
外の光がまぶしい
手で光りを遮って僕は前を見る


「!?」
影が、そこにあった
病院のベッドの中で起きあがっている影
最初それは、死神かと思った


「死神とは失礼ね・・・。ま、あなたが初めてじゃないけどね、そう思ったのは」
目の前の影がこちらを向いた


影は、女の人だった


年齢は20歳くらいだろうか、ベッドに付くまで伸びた黒い髪、肌の色は少し薄い肌色、整った顔立ちだが目つきが少し恐い、服はお葬式の礼服を思わせるくらいに黒い、華奢ではないが細い体、それは黒い天使と思えるくらい美人だった

死神と思ったのは間違い・・・


「って、俺まだ何も言ってないって」
「わかるのよ。ほんの少しくらいは。読心術って知らない?」
「初対面の人の心を読まないでくださいよ」
「仕方ないじゃない、わかってしまうんだから」
「・・・」

って、何普通に会話してんだろ俺


「名前は?」
「・・・は?」
「君の名前だよ」
「なんで教えないといけないのさ?心読めるんだろ?」
「言ったでしょ?少しだけだって。油断している時とか」

おいおい・・・

「・・・ならこれから俺が油断していても読まないでくださいね」
「できる限りね。で、あなたの名前は?」
俺は少しだけ考えてから、ゆっくりと、こう言った


珀白 琥珀 (はくしろ こはく)



「それが俺の名前だ」

「いい名前じゃない。白って正義みたいな感じがするけど、君はどうかな?」
「俺は普通だよ」
「ふーん・・・」
「で、名前言ったんだから、そっちも言えよ」
「何を?」
「名前だよ名前!!」



し〜〜〜〜っ



と、彼女は人差し指を口にあて

「ここは病院だよ」

と優しく言った

見ると、彼女の二つ隣りの老人がこっちを睨みつけている

「あんた・・・」
狙っただろ・・・

心を読まれたのか読まれてないのかわからないが、彼女はくすくすと笑っていた



司麻木 美代(すまき みよ)



「それがあたしの名前」
と、一瞬だけ、彼女は少し悲しげに言った

「ふーん・・・」
珍しい名前である
少なくとも自分が見てきた名前の中にはそんな名字はなかった


「ねえ?」
彼女は突然聞いてきた
「あなたはなんでここに来たの?」
「それは・・・」
こっちが訊きたいくらいだった

「じゃあここに来る前の話をして?」

「・・・」
読まれた


ま、自分でもわからないのが本音だ
なら話しているうちに原因がわかるだろうと思った

「えっとね・・・」

俺は気絶する前の記憶を、できるだけ細かく思い出しながら言った

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