2011/10/4




出会って十二年。付き合って十年。言葉にすればそれだけのこと。けれど、実際には、人生のほぼ半分。気が遠くなるような時間だ。それだけの間、俺は当然のようにあいつの隣にいて、あいつもまた、自然に俺の隣で呼吸している。出会って十二年。付き合って十年。俺もあいつも、色々と変わってしまったけれど、隣に感じる温かな体温だけはいつまでも変わらない。
「誕生日、おめでとうさん」
ほら、今年も、一番初めに聞くおめでとうは、こいつのものだった。十年連続。心地よい低音がとろけた意識を穿つ。ありがとうと返せば、俺も、奴も、幸せそうに笑い合って。

テニスをやめて、跡部財閥を継ぐことに、何の迷いもなかったわけじゃなかった。テニスは俺そのものだ。本気だった。本気で続けていきたいと、そう思えた、たった一つの。けれど、『跡部』にとっての俺も同じ。たった一つの。替えのきかない。苦悩の末、俺が選びとったのは『跡部』だった。テニスを捨て、『跡部』を継いだ俺の傍に、たった一つ残った、それが忍足だった。

「侑士」
「ん?」
「ありがとう」
二回目のこの言葉に、忍足は確かなものを感じ取ったのか、何も聞き返さずに微笑んでくれた。出会って十二年。付き合って十年。月日が育んだ、愛情とはまた違う絆がそこにはあった。それがくすぐったくて、あたたかい。
少年特有のあどけなさが消えて、ますます綺麗になった最愛のひとの唇に。節目の今日だから、言える一言を口付けに替えて贈ろう。
そばにいてくれてありがとう。



Happy birthday Kego!

.

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ