二次小説短編集(3)
□機嫌を治す特効薬(3*九景)
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想い人が皆から好かれている事に悪い気はしないし、人に気を配れる明るい性格のその人に自然と沢山の人間が集まるのも当然だ。
ましてやこの大所帯の旅、自分以外の誰かが側に居るのは仕方がない。
…と思える位には大人なつもりでもあった。
だがそれは傲りだったらしい。
「お〜い景時!」
「景時あのさ〜」
「景時、ちょっと良いですか…?」
幾度と呼ばれる名前。
その度に人懐こい笑顔で返事をしてどうしたの?と首を傾げる。
今も名前を呼んだ弁慶の側で話を聞いて…
「景時っ!!」
景時の顔が困った様な笑みを浮かべ、頬を僅かに染めた瞬間、九郎の身体は勝手に動いていた。
「くっ九郎っ?!」
急に腕を掴まれたかと思うと、何事かを理解する前に自分の身体はすっかり九郎の胸に抱き締められていて、景時は驚いて目を丸くする。
眉間に皺を寄せて弁慶を睨む眼差しに、さっき言われた弁慶の言葉を思い出した景時は、思わず真っ赤になってしまった。
息を飲んだのに気付いた九郎がその瞳を弁慶から景時に移すと、慌てて目線を反らしてうつ向く景時。
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