小市民狼と情報屋狐

□狼の推理
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「奈倉さん、プリン好きですか?」
 
台所からひょこっと顔を覗かせて、荷物を片付けていた乃良はそう聞いてきた。
奈倉は首を傾げる。
 
「俺? 嫌いじゃないよ」
 
「一緒に食べませんか? 昨日の夜、作り置きしておいたんです」
 
「ふーん。じゃあ、いただこうかな」
 
奈倉の答えに満足したらしい乃良は、また台所へと引っ込んだ。
しばらく奈倉がテレビを見ていると、乃良が盆の上にプリンとスプーンを載せてやってくる。
 
「おまたせしました! 自信作ですよー」
 
「へぇ、美味しそうだね」
 
奈倉はリモコンをソファの手すりに置き、ソファを背もたれ代わりにローテーブルの前に座った。
ローテーブルにプリンが載った皿とスプーンを置いて、乃良も奈倉と向かい合わせに座る。
 
「はい、どうぞ」
 
「ありがとう。じゃ、いただきます」
 
奈倉はスプーンを取ると、一口分、口に運んだ。
 
「ん! 美味しいね」
 
「良かった、そう言ってもらえて」
 
そう言って乃良は微笑むと、自分もプリンを食べ始める。
途端に、幸せそうに緩む乃良の表情。
 
「ん〜、やっぱりケーキ屋さんのよりは劣るけど、美味しい!」
 
「甘い物、好きなの?」
 
「はい、それはもう! でもこの町には最近引っ越してきたばかりだから、
どんなケーキ屋さんがあるのかは、まだ知らないんです」
 
「よかったら、今度教えてあげようか? 池袋だけじゃなくて新宿にもいいケーキショップはたくさんあるから」
 
「本当ですか? ありがとうございます! あ、すみませんけどリモコン取ってもらえますか?」
 
「ん? はい、どうぞ」
 
そんな話をしながら、乃良は早くもプリンを食べ終えた。
奈倉が最後の一口を食べようとした瞬間、乃良は笑顔を浮かべながら口を開く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「奈倉さん、」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
……それから、冒頭のシーンだ。
 
 
 
 
 
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