青春トラジコメディ

□愚痴
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日曜日。
 
「あー、イライラするイライラするイライラするイライラするーッ!! 何なの、あの折原臨也って人は!!
『俺は人間が大好きだ』とか『特定の人間一人を相手にする事なんか無い』とか言っておきながら
いきなり『君を好きになっちゃうそうだよ』とか言ってキス迫ってくる奴がいるか?! いるんだよいたんだよ!
しかもまだ他にも問題児いるらしいし……あーもう! もっと別の学校選べば――つか東京出ればよかった!
ねぇ聞いてるの甲太郎?!」
 
『デカい声出すな、耳が痛い』
 
乙羽はぎゃいぎゃいと不満をぶちまけながら、電話向こうの弟に向かって叫ぶ。
当の弟はというと、姉からただ一方的に不満を聞くという理不尽な行為へ全く反抗しない代わりに、たまに
「分かった分かった」や「声がうるさい」などと言った内容の言葉しか答えない。
ベッドに身を沈めながらゴロゴロと転がっていた乙羽だったが、急に動きを止めて真剣な表情になる。
 
「それで、そっちの《転校生》は?」
 
『流石、情報が早いな。この様子だと数日中に墓地に忍び込まれそうだ』
 
「しっかりしてよ、《生徒会》」
 
『会長に文句を言え』
 
「じゃあ甲太郎名義でだらだらと文句を綴った文書を送ってやろ。神鳳君に」
 
『調子に乗ってすんませんでした俺が悪かったですごめんなさい! 頼むから神鳳は止めてくれ神鳳は!』
 
「よろしい」
 
焦って必死に謝る甲太郎の声を聞き、乙羽はふふんと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
ちなみに今乙羽が言った《神鳳》という人物は天香学園の会計委員であり、会長ではない。
しかし《生徒会》内では参謀のような立場にあり、学園内でも信用深い人物である。
その分、敵に回したら非常に怖ろしい。《怖》というより《恐》の感じが似合う男だ。
何が恐ろしいのかは、話が長くなるので、ここでは割愛させて頂く。
甲太郎は『全く……』と呟いていたが、内心冷や汗をかいていた。
 
「まぁ冗談は置いといて」
 
『冗談かよ』
 
「今回の監視の担当って誰?」
 
『朱堂』
 
「……ご、ご愁傷様《転校生》……」
 
これには流石に乙羽も《転校生》に本気で同情した。
朱堂という人物は、神鳳のいる《生徒会役員》の下に存在する
《生徒会執行委員》の一人で、神鳳とはまた別の意味で怖れられている存在である。
何で怖れられているかって? それはいずれ本編で語られると思うのでここでは割愛させてもらう。
 
「朱堂君と追いかけっこするくらいなら、甲太郎からカレーを盗んで売っ払う方がマシだよ」
 
『蹴り殺すぞお前』
 
「イヤだなぁ、甲太郎のカレーは店で売られてても不自然じゃないくらい絶品だ・っていう意味だよ」
 
『当たり前だろ! 大体俺がカレーにかけている情熱はだな――』
 
 
ブツッ
 
 
強制終了。
話が長くなりそうだったので、乙羽は勝手にケータイの通話ボタンを押した。
パチンッとケータイを畳んで窓の外を見ると、日はちょうど真上に差し掛かっている。
 
「……買い物、行こうかな」
 
昨日はあまり出来なかったから。
そう考え、乙羽はベッドから立ち上がった。
 
 
 
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