青春トラジコメディ

□愚痴
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姉弟は、異常だった。
 
 
 
姉は、必要以上に他人の世話を焼き、偽りの輝きで着飾った瞳で世界を見ていた。
 
弟は、必要以上に他人に関わらず、ただ深淵のような暗い瞳で世界を見ていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
彼女らの共通点は、《関係ないモノ》は全て《どうでもいいコト》で片付けてしまう所。
 
 
自分に関係なければ、全てが《どうでもいい》。
 
自分に被害がなければ、全てが《どうでもいい》。
 
例え自分に関係があったとしても、全部全部ぜんぶ《どうでもいい》。
 
 
白亜で出来た分厚い壁が、彼女らの心と世界を隔てていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
しかし、ここで1つの事件が起こる。
 
 
 
姉は変わった。
 
分厚かった壁にほんの少し穴を開けた時、《どうでもいいモノ》が《大切なモノ》へと変化した。
 
モノクロだった世界が、カラーに一変した。
 
 
 
 
 
そして、瞬時に、暗転した。
 
 
 
《大切なモノ》に《関係ないコト》も《どうでもいいコト》も絡み合い、《大切なモノ》は――
 
 
 
 
 
壊れて、消えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
弟は変わらなかった。
 
 
壁は更なる厚みを持つようになった。
 
《大切なモノ》に関われば、いつか自ら壊す羽目になるかもしれない。
 
それを恐れて。
 
だから、留まった。
 
 
 
 
 
姉は恐れた。
 
 
自ら《大切なコト》を壊してしまうことを。
 
これ以上、自分の《大切なコト》が消えてしまう事に、耐えきれなかった。
 
 
だから、逃げた。
 
 
 
 
 
《大切なコト》を奪い返して。
 
弟に背中を押されて。
 
《平穏》を求めて。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 だが
 
 
 
 世界は
 
 
 
 少女に
 
 
 
 《平穏》を
 
 
 
 許さなかった
 
 
 
 
 
 
 
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