・+攘夷+・
□見詰める視線 ※
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からん、と箸が茶碗に落ちる。
「どうした」
きょとん。とした表情で向かいに座る男が言う。
別行動していたが、戦略の上で手を組むことになった銀時と、目の前の男、高杉晋助。
高杉は銀時達が拠点としていたアジトに兵を連れてきたはいいが、彼の部屋が用意できなかったのだ。
他の隊員と同じ部屋でもいい、という高杉の意見を押しのけて自分の部屋に連れ込んだのは他でもない銀時だった。
色々バタバタしていて夕飯が他の面子とずれてしまった二人は、こうして部屋で遅めの夕飯を食べていたのだが。
肘をついて飯を口に運んでいた銀時の手から箸が落ちたのだ。
「…なんだよ、飯でも付いてるか?」
ぼけーっとした表情で見られているのは心地いい心境ではない。
高杉は箸を置くと口元を探った。
「いやいやいやっ!!ホントごめん何でもないっ!!」
銀時は落とした箸を拾い上げて、味噌汁を飲む。が勢い余って噎せ込んだ。
「おいおい…どうしたんだァ…」
高杉は苦笑しながらそう言うと、わざわざ席を立って銀時の背中をさすってやった。
「ゲホッ…ごめ…」
涙目になりながら答える銀時。
彼がこんなに慌てたり取り乱したりすることは稀なのだ。きっと何か理由があるはず。
高杉は眉間に皺を寄せて溜め息をついた。
「考え事か?」
らしくもない、と言えば苦笑い。
「ねぇ高杉、お前気付いてる?」
「あぁ?何がだ」
一体何に気付いてると言うんだ。主語がない。
「いや…別に、いいよ。気付いてないなら」
お前に見とれていた。
何て言えるわけもない。
「銀時ィ…」
ああ、そんな怒った顔をしないで欲しい。
何というか。
この前見たあの鋭い眼差しの高杉も見ていてゾクゾクするものがあるのだが(その顔を涙で濡らしてみたいとかそんな感情で)、先程目の前でぼんやりした表情をして口に食事を運ぶ姿も、物凄くそそるものがあるのだ。
その口に突っ込んでやろうか、とか。
溜まってるんだろうか。
そういや色艶めいた事なんて暫くしてないな、と思った。
「高杉さぁ、お前いつヤッた…?」
「あぁ?」
相変わらず不機嫌そうな顔をしている高杉に確信をつく一言を言ってやれば、怒りの中に酷く狼狽した気配が見え隠れする。
「てめぇにゃ関係ねぇだろ」
悪化する状況の中、溜まったストレスを発散しようとしても周りにはむさ苦しい男しかいないのだ。
銀時も、下っ端の連中から好みの男を選んで何回か犯した事がある。それも、ふと気付けば黒髪で生意気そうな奴ばかり。
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