夢
□なだめ方
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そーっと…な扉の開け閉めは我ながら完璧だ。
「あれっ?…よっしゃ、まだ帰って来てない!!」
歩いて来たままの形で、いつも豪快に脱ぎ捨ててある大きな靴が玄関に無く、ほっと胸を撫で下ろした。
時刻は午後十時。
際どい時間だ、本当に…運が良かった。
でもまだ油断は出来ない。
靴を脱ぐ為、せかせかと180度回転する。
早速家族に
「口裏合わせをお願いしなくては……!」
「へえーそりゃ、何についての?」
「ヒ…ッ!!!?」
ポストがあるから使われていない筈の新聞差し込み口が、ぱかりと開いた。
「あら…、お帰りなさぁーい」
今度はちゃんと開いた玄関のドアにあえての余裕な笑顔を目一杯作る。
勿論こういう時の為のぶりっ子モード(過剰バージョン)で。
「ご飯にする?お風呂にするぅ?それともぉー、わ・た「死ね」
本気のこもった言葉にそれ以上何も言えなくなった。
首根っこを持たれ運ばれる時の、怒り丸出しな足音が正直怖い。
「は、はいお茶どうぞ」
「……」
他の家族はそれぞれ部屋にいるんだろうか、誰もいないテーブルに蛭魔のご飯を並べる。
「あっ私やります。百回っすよね」
「一億回」
「いっ!?」
「一生混ぜてろ、そんで疲労でくたばりやがれ」
……うん、つまり誰も助けてくれないってことだ。
どうすればいいのやら…。
一億回掻き交ぜろと命ぜられた納豆よりも、この人を。