..テニスの王子様..
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「ひーよーしー君!」
「お久しぶりです。ななし先輩。そんな大きな声出さなくても聞こえてるんで」
「数ヶ月振りに来たからテンション上がっちゃった」
ここは、日吉若君のお家。彼は古武術を嗜んでいて昔からふたご共々お世話になっている。
今日は休みの日で久しぶりに日吉君と手合わせがしたいと思い、前々から会う約束をしていたのである。
「にしても、ふたご先輩がいないなんて珍しいこともあるんですね」
「なんか、ふたご最近部活始めたから毎日ぐったりして帰ってくるんだよ。体力だけはあるのに、余程ハードな事をしてるんだろうね」
「でしょうね」
彼は遠い目をしながら、俊敏なレスポンスを返してくれた。
ん、このパターンを私は知ってるぞ。
「そういや、日吉君って部活動何やってたっけ?古武術、珠算部?」
「テニス部です」
やっぱりか。
「ふたごはちゃんと部活をマネジメント出来てる?」
「そこは、やはりふたご先輩というか抜かりはないです。ただ、あの性格なので周りに無茶させて反感を買ってることも多いのですが」
俺は嫌いじゃないです。と鋭い目つきで言ってのける彼はまるで戦国武将のようだ。
いや、なんとなく。
別に小さな声で下克上云々聞こえてきたからという訳では決してないからね!ぁ
「とりあえず、いつもと同じ形式の3本勝負でお願いしても良いかな?」
「はい。俺はそれで構いません」
柔道場に移って、お互い構える。
前回は一本も取れなかったから、今回は一本取ることに集中しよう。
私は先手必勝とばかりに相手の懐に潜り込んだ。
「あー、日吉君強いよ!強すぎるよ」
「ルール縛りがなければこっちは圧倒的に不利ですがね。まぁ、それでもななし先輩だけには負けたくないですけど」
「悔しい!でも、一本貰ったから目標は達成したもんね!」
ドヤっとケラケラ笑う私に苛ついたのか、ゴスッと頭を叩かれた。
痛い。
私がふてくされて日吉君を見ていると、彼はフッと綺麗な笑みを浮かべた。
イケメンだなぁ。
「本当に、貴方達は鬱陶しいくらいに騒がしいです」
ズキズキと痛む頭をさすり、次はどうやって相手から一本取ろうか考えた。
よし、鬱陶しい作戦でいこう。←
「次こそは日吉君にもふたごにも勝つからね!」
私は拳を日吉君の方へ突きつけ、今日一番の笑顔で言い放った。