..テニスの王子様..
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最近、なんだか視線を感じるようになった。
それも陸上部の助っ人をし始めた頃からなのだが。
張り付くような気持ち悪い視線。
鳥肌が立つ。このままだと練習に支障を来すと考えた私は正体を突き止めることにした。
「さすがななし!ホントに感謝するわ!これなら大会にも通用する記録よ」
「なんとか、かな。私、ちょっと休憩に入るね」
「ドリンクはあっちの方においてあるから」
「ありがとう」
さて、と。
今のところ気持ち悪い視線はないみたいだけど、どうやって正体を突き止めれば良いのだろうか。
そんなことを考えながら、私は水道で顔を洗っていた。
「ななしちゃん、久しぶりやな」
「わ、忍足君だっけ?久しぶり」
顔をふいて後ろを振り向くと、この前ふたご呼び出し事件の時に初めて喋った忍足君がいた。
テニスの後の休憩中か、彼もかなりの汗をかいている。
喋り方からして関西の子だろうなーと考えていたら、忍足君が口を開いた。
眼鏡が逆光していまいち表情が読めないが。
「見たで。自分格闘部なのに、今陸上やっとったやろ」
「私、今陸上部の助っ人やってるんだ」
「あー、だからそんな格好してるん」
ジリジリと近寄ってくる忍足君。
正直、怖い←
後ろに下がってるうちにいつの間にか、壁際まで来てしまい逃げ場を失った。
え、え、本気で怖いんですけども!
「足の綺麗な子、いいと思うで」
ぞわ
って、最近感じる気持ち悪い視線の正体はこの人のせいじゃないんだろうか
と冷静に考えていたら、目の前に立っていた忍足君が消えた。
「あっれー、ななし、なんでここにいるの?忍足見なかった?」
「ふたご、踏んでる踏んでる」
いつもにないくらいキラキラオーラを発しているのは、わざと忍足君を踏みつけたんじゃないと思うくらいに爽やかな笑顔であった。
いや、わざとだろうけど。
タイミング良く登場したふたごに感謝しつつ、おもいっきり踏みつけられている忍足君には心の中で手を合わせ、私はその場を去った。
後はふたごに任せよう。
陸上のユニフォームは足がかなり出るからこの1ヶ月間だけの辛抱と割り切って、忍足君には半径3メートル以内には絶対近付かないでおこう。
そう心に誓って、私はまた練習に励むのであった。