..はじめの一歩..

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「んー・・・」




私、名無しななしは今凄い悩みを抱えております。


かれこれ1時間。私は教室の同じ場所、同じ体勢でうなり声を出していた。


そんな調子に周りの生徒も声を掛けることが出来ないのか、遠くからひそひそと話し声が聞こえる。



「名無しさん、どうしたの?」


「ひゃう!?」


「わ、ごめん。驚かしちゃったかな」


「ま!ま!幕之内君!!そ、そんなことない!あ!わたし、今日は用事があるんだった!」



足がもつれそうになりつつも、私は慌てて教室を飛び出した。




ぽつんと残された一歩は



「あー、凄い早さで飛び出して行っちゃった。僕、何か悪いことしたかなー・・・」



とこちらもこちらで最近様子のおかしなななしの事を考え、うなり声を出すのでした。




教室から飛び出した私は、公園の一角のブランコに腰掛けていた。


最近ずっと変だ。最近の悩みはこれ。


気付いたら幕之内君の事を考えてるし、何かと目で追ってしまっている。かといって声を掛けられたら掛けられたで、その場に居ても立ってもいられなくなって遠ざかってしまうのだ。



「私らしくない、よな」



このまま、彼から逃げていたら嫌われるかもしれないし、それだけは絶対に避けたい。



「あー、誰かに相談しようかな」



でも誰に?


ジムの男性陣は却下だ。からかわれるから。

となると女性だ。大人目線でアドバイスをくれる人・・・





「山口せんせー!!」


「あら、ななしちゃん。この前の捻挫は良くなった?」



「はい!」



それはもう、全力ダッシュで幕之内君の前から逃げ出せるくらいに。


私は先生の前でクルンと一回転して見せた。

ここは、私がちょっと通ってる医院。

山口先生は大人でナイスバデーな女性である。


先生はニコニコしながら、足を見るから椅子に座ってと言い、道具を出している。



「実は、ですね。先生に相談がありまして」


「あら、悩み事?」


「はい・・・私、書類を職員室に持って行こうとした時に段差が見えなくて足を痛めたんです」


「その話は、この前も聞いたわよ」



私の足を触りながら、山口先生が言う。

この体勢だと必然と先生の胸に目がいってしまう。


あぁ、ちくしょう。羨ましい




「その時、クラスの男の子に保健室まで運んで貰ったんです」


「あら、その子なかなかやるじゃない」



「はい・・・。私も、彼のことは優しい人だってことは知ってたんです」



だけど、

と私は口を噤んだ。


いつの間にか、紅茶を煎れてきた先生が私の目の前にカップを置く。


私はその湯気をただ見つめて、ため息をついた。









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