..はじめの一歩..
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「名無しさん!学校にも来ないし、ジムにも来ないから凄い心配したよ」
「風邪引いちゃってさ、2日間ずっと家に引きこもってたんだー」
久しぶり、とはいっても数日振りのジムなのだが、入るや否や幕之内君が凄い早さで私の目の前に現れた。
なんか、犬みたいだ。ぁ
「これ授業のノート。あとこれ、この前のテストだよ」
「ん、ありがとう。・・・あ」
「?」
「あぁぁあぁあ!」
頭にハテナを浮かべている幕之内君を招き、紙の一点を見せる。
そこには82の文字が。
固まる幕之内君をそのまま放置し、横を通り過ぎようとした木村さんに飛びついた。
「木村さん、木村さん!」
「どうしたの?ななしちゃん、やけに嬉しそうだけど」
「実は!私がテストで80点以上取ったら、幕之内君が鷹村さんにキスする約束をしたんですよ」
「ほほう」
木村さんが凄いあくどい顔をしている。
いや、私もだが。
忍び足で逃げようとした幕之内君を木村さんが確保した。
タイミングよく、鷹村さんがやってくる。
準備は万端だ。
「まっ待って下さい!僕、鷹村さんにキスするくらいなら、名無しさんにキスしたいです!」
「「あ″あん?」」
「ひっ、ごめんなさぁあいっ!」
とんでもないことを叫ぶ幕之内君に、木村さんと鷹村さんが同時に睨み付ける。
今の幕之内君の台詞でふと思い出した。
「あ、そういえば、鷹村さんにキスか、私にキスかでした☆てへぺろ」
「いまいち何の話だかはわかんねーが、俺サマを巻き込むな」
「ななしちゃん。こんな奴のキスなんかより、俺のキスの方がずっとご褒美だよ」
私の肩を抱き寄せ、顎を上げるまでの動作が速すぎて何の抵抗も出来なかった。
何故か、木村さんと見つめ合う。
心なしか、どんどん顔が近づいてくるではないか。
「木村さん甘いですね」
幕之内君が私と木村さんを凄い勢いで引き剥がし、鷹村さんが木村さんを一発KOするまでわずか1秒。
見事なまでの連携プレー。
もうなんていうか、事の流れについていけない・・・
地面に倒れている木村さんに手を合わし、私はご愁傷様ですと呟いた。
そんなとある日の午後。
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